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『聞こえないフリしているんだろ?』
(ううん、何も聞こえない)
馬鹿にしないでほしい、これでも知らない人についていくことがダメなんだ。
別に期待とか興味とかまったくない。
すると首にかけているお母さんの形見のロケットペンダントが急に光りだす。
「えっ!?……どうして」
赤い光は線となりまっすぐにのびていく。
僕は考えた、この光に進んでいけば家に帰れるかもしれない。
お母さんに感謝しながら僕は光にむかって進む。
『ちっ……運がいい。こうしてやる』
声は今から何かしかけようとしている。
早く家についてほしい。
「急いで、お願いだから……!」
すると家がやっとみえてきた。
僕が心の中でガッツポーズをしようとした瞬間。
パリン!
ロケットペンダントの宝石の部分が粉々になってしまった。
「ああ……ウソでしょ?」
光が消え、跡形もなくただのネックレスになってしまった。
僕は顔を青ざめて、振り向いた。
そこにいたのは僕より背の高い男の人で、ニヤニヤしながら僕をみた。
『やっと気がついてくれた。俺の話を聞いてくれ』
僕が悲鳴をあげようとしたそのとき。
扉が急に開いて父さんが必死な顔で僕にだきつく。
「大丈夫か!?紫苑!」
「う……うわああああああああ!」
僕は泣きながら父さんの腕の中で気を失った。
もうあの男の人はいない……。
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