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僕は見つからないようにソファーの裏側に隠れる。
大きなことになってしまった。
きっと学校ではウワサが広まっているんだろう。
(もしかして、また……)
目を閉じようとしたときだった。
「みーつけたぜ」
「うわああ」
僕の背後から氷室君があらわれてついに見つかってしまう。
しまった、僕より身長が高いからバレるのも無理はない。
「あ、あの。約束やぶってごめんなさ……」
「これから始めるんだよ。おにーさんも来いよ」
『ああ。お招きするよ』
氷室君とこの人は知り合いなのだろうか?
でも、そうだとしたら氷室君が人間ではない可能性でも考えられる。
「ひ、氷室君。やっぱり帰ってもらって大丈夫だから」
「んな訳にはいかねえよ。それにお前の黒いウワサは消えそうだぜ」
え……?僕はどういうことか理解できなかった。
「何があったの?」
「それがな……」
氷室君は学校で起こった出来事を面白そうに笑いながら話した。
男の人も興味深そうに聞いている。
「そうだったんだ……」
「まあ。この家も悪くないと思うぜ?たしかに雰囲気はヤバイが」
すると男性が僕に話しかける。
『シオン。俺はここに住みついていた者さ』
「ええっ!?」
イヤな予感がして僕は視界をはなす。
が、それもはずれて。
『俺、実は……狼男なんだ』
「えっ……氷室君。知り合いじゃないよね!?」
「違うわ!お前マジで言ってんのかよ……」
さすがの氷室君も驚いている。
「幽霊じゃなくて、狼男なの?」
『ああ、俺はシロウ。あのときはおどろかせて悪いな』
すると空が暗くなり、窓から月の光がさす。
そしてシロウが唸り声をあげて、姿が変化した。
耳、尻尾、爪、牙……それは人型を保ちながら魔へと変化する。
『シオン、俺の話につきあってくれないか?そこのガキもついでによ』
さっきまで優しそうだった彼の性格が変わった。
僕は悲鳴をあげ、氷室君は戦闘態勢にはいっていた。
「え……?怖くないの⁉」
「お前が具合が悪いってのはウソなんだろ?俺は霊感があるから慣れっこなんだよ。やんのか?」
すごい、とても肝がすわっている。
シロウも言い返す。
『へえ……お前ずいぶんと度胸があるな。不良ってのはそんなものか』
「てめえ……上等じゃねえか!」
シロウが余裕そうに長い舌で舌なめずりをする。
氷室君は完全に怒っている。
僕はどうしたらいいかわからなかった。
(まずいよ!このままだとやられちゃう!)
泣きそうになったが、勇気を出して話しかける。
自然と体が動いていたから。
「あのさ!ケンカはやめて!僕が話を聞いてあげるから!」
「なんだと……?月読」
『本当か、シオン?』
二人が困惑しているけど僕はとまらなかった。
父さんが来てからでは遅いから。
[自分の身は自分で守りなさい]
天国に逝ったお母さんの言葉を信じて。
「僕のせいでこうなったんだ。争うのはイヤだから」
真剣なまなざしを二人に向けるとおとなしくなった。
あれ?意外とちょろい?
「そ、そうだな……俺は見舞いに来ただけだしな」
『ああ。シオンがそう言うなら』
僕は決めていた、こんなことが毎日続くなら。
人ならざる者の話も聞いてあげよう。
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