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今日は氷室君に呼び出しの約束をされていて、僕は断った。
もしかして絶対に怒っているはず。
なぜなら僕が休んだから。
シロウは空気を読んだのか僕たちの話を聞いていた。
『続けていいぜ。俺は人間の話が好きだからよ』
僕と氷室君は、はっと我にかえりお互いに咳払いする。
はずかしくなってきた。
「そ、それで……あらためて。約束って?」
僕が震えながら声をあげると氷室君はそっと近くまで来て言った。
「安心しろ、俺はお前のこと否定しない。何かあったら必ず相談しろ。たとえどんなことでもな」
「それが約束?」
「ああ、他にないだろ」
そう言い終えて彼はじっと僕の目をみつめた。
怖いけど僕には優しい光がみえている気がした。
「あと、明彦でいい。呼び捨すてじゃなきゃ許さねえ」
「いいの?じゃあ……明彦」
僕が名前を呼ぶと明彦はやっと表情がやわらかくなった。
だけどすぐに強面の顔にもどる。
「勘違いするなよ。紫苑は漢として接してやるだけだ」
『おお。シオンが強くなるってことだな』
今まで大人しくしていたシロウが僕の容姿を気にしたのか、勝手に理解した。
不愛想な顔で明彦はシロウに文句を言う。
「おい。狼男だろうが、絶対こいつに手をだすんじゃねえぞ」
『安心してくれ。俺は人間の友達がほしいだけだ』
「あはは……」
僕は少し肩の力がおりたような感じがした。
明彦とはいい友達になれそう。
その後、明彦は宿題のプリントをわたし、さらには連絡先まで教えてくれた。
彼いわく、僕を悪から守る存在として中二病的なことを話しながら帰っていった。
僕は玄関先で手をふり感謝した。
「ありがとう、明彦」
「おう。じゃあな」
僕はなんだかうれしくなりはじめての理解者に出会えることができた。
その場で僕をじっと見つめていたシロウは何やら考え事をしていた。
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