1,季節外れの引っこし

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1,季節外れの引っこし

さよなら、僕の故郷。 月読紫苑(つくよみしおん)は父の車に乗りながらカーミラーをながめていた。 いきなり父さんが転勤することになって僕は少しおどろいた。 幼なじみも友達もいない僕にとってはむしろよかった。 僕は男勝りな格好をしているのには理由がある。 そう、父さんが言うには僕はにねらわれやすいんだって。 だから小学校のときのランドセルも黒で、髪もメンズライクにしている。 でも僕はそれになれたから女の子らしさなんてどうでもよかった。 「ねえ、父さん。僕が通う中学校ってどこなんだ?」 運転している父さんに僕が話しかけると、真剣な顔で言った。 「いいか。紫苑が通うところは家から近い学校なんだ。前にも言ったがお前はもう少し友達をつくるべきだ。せっかく、いじめの原因が分かったんだからな」 僕の父さんは大手ゲーム会社の社長で有名だ。 別のオフィスに変更するから僕もその街に行かなくてはいけない。 僕はお母さんの形見であるロケットペンダントをいつもみにつけている。 月読家は、とても恐ろしい家系らしく明治時代から伝えられていた。 お母さんがいなくなってからは僕と父さんだけが月読家を守らなければいけない。 一人っ子だからしかたがない、女の子らしくしろと以前からの学校ではいじめられていたけれど父さんと恩師の高道(たかみち)先生のおかげで全ては解決した。
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