2,苦労と不安と期待の前に

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 放課後、何事もなく授業は終わり僕がそろそろ下校しようとしたときだった。 「よう、月読。これから帰るのか?今日は大変だっただろ」 「うん。転校生だから余計に話しかけてきて。うまく答えられなかった」 スポーツが得意でクラスの人気者の加藤君が気にするなと言わんばかりになぐさめる。 「まあ、そうだよな。君も色々大変だったらしいだろ。大丈夫だって俺が目立ち続けるからさ。無理しなくていいぜ」 「あ、ありがとう」 さわやかな笑顔で加藤君は僕を認めてくれた。 今までこんな子はいなかったから新鮮だった。 するとまだクラスに残っていた生徒が話をしているのを僕は見かけた。 「ねえ、聞いた?あのウワサ」 「うん……あのの家に誰かが住んでいるって」 ぎくっ、と僕は顔を青ざめてしまった。 右側の気の強そうなポニーテールが似合う東条(とうじょう)さんと左側の大人しそうな黒髪ロングの前川(まえかわ)さんだ。 「他のクラスの子から聞いた話なんだけどね、幽霊がでるらしいわ」 「こ、こわいこと言わないでよ……」 まさかとは思うが僕がそこに住んでいるなんて口に言えるのがキツイ。 加藤君が話しかける。 「なあ、月読ってどこに住んでるんだ?」 「え、えーと……」 すると僕は何かを落としてしまいそれを見て汗が止まらなかった。 地図だ、まずい。 「ん?何か落としたぜ?」 「あっ……それは」 ダメと言いかけそうになったが加藤君が顔を青ざめる。 「おい、まさかお前が引っこしてきた家って……」 「う、うん」 僕はうつむいた。 それに気がついた二人がかけよってくる。 「え、まさか月読さんが?」 「に住んでるの……?」 僕はだまってうなずいた。 やってしまった、どう説明したらいいかわからない。 三人は僕を見て悲鳴をあげた。 「あっ!……まって」 どうやら逃げ出したようだ。 それに気がついた他の生徒たちも僕を見て逃げる。 (運が悪いんだ……僕は) 僕はさっさと逃げるようにして帰ろうとしたときだった。 背後から僕の肩をつかまれる。 僕がふりむくと、そこには同じ席の氷室君がいた。 「え……なにか用かな」 「明日の昼休み、俺につきあえ」 目つきが鋭い、まるで狼のようだった。 僕は足がふるえてくる。 「ど、どうして……」 「それは明日話す。絶対に来いよ。もし、やぶったら……」 「わ、わかった」 僕は彼の手をふりはらい急いで教室を後にした。 最悪な日で終わってしまった……。
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