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3,奇妙な出来事
下校中も僕は生徒たちの視線が目に入り、さえぎるように逃げだす。
そう、幽霊屋敷の転校生。
そのウワサが広まってからは僕は部活に入ることさえイヤになった。
一年生と三年生の間にも、それは広まりそろそろ大きくなってきた。
「ウソだろ……僕はこんなこと望んでいなかったのに」
学校に行くまでどれだけ苦労したことか。
それは自分でも理解していた。
明日が心配になり僕はさっさと学校を後にした。
(明日になっても、無視しよう。僕は目立ってはいけないんだから)
氷室君との約束は守るがそれ以外は断る。
ぎゅっと、こぶしを握りしめて泣くのを我慢して自宅へとむかった。
「あれ?ここ近道のはずなんだけどな……」
僕は地図通りに歩いている。
しかしここはなぜかおかしい。
人気がなくあたりは廃墟だらけ。
空き巣が多いのだろう、治安も悪そうだ。
「しまったな……迷ったかも」
今日のことがショックすぎてうまく帰れない。
逆に不気味だ。
カラスが鳴き、夕焼けが僕を照らす。
イヤな予感を抱きながらも僕は進み続ける。
「ん?なんだ……」
僕は強い視線を感じた。
誰かに見られている気がする。
(不審者?それとも……)
僕は一度振り返る。
だが誰もいない。
「おかしい。絶対にねっている気がする……」
父さんから言われたねらわれやすいと言うのはこれなのだろう。
足元が急にフラッとして僕は転びそうになったがうまくよける。
「たとえストーカーだったとしても、無視して逃げよう」
中学生の僕はスマホなんて持ってない。
だから自力で切り抜けるしか方法はない。
すると、背後から声がした。
『おい』
低い、男性の声だ。
絶対に振り向いてはいけない。
(無視だ、紫苑!)
早歩きで地図を見ながら進む。
声は、まだやまない。
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