鋭い目の少年

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鋭い目の少年

ぴょん、ぴょん、ぴょん! 弾みをつけ、繰り出されるムーンスライムの攻撃!威力はスケルゴンほどじゃない・・・のだが、弾力がある為、弾き飛ばされ転倒してしまう。 「攻撃は一定のリズムで繰り出される、どうにか動きを止めなければ・・・そうだ、キョウカさん銀の盾を前借りできませんか?」 「あの、どうぞ使って下さい!」 キョウカさんから受け取った銀の盾を構え、攻撃に備える。 「さぁ、来い!」 ぴょん、ぴょん、ぴょん! ムーンスライムの攻撃を受けても、俺は転倒しなかった。 盾にぶつかったムーンスライムは、ぽよんと上に飛ぶ。 しかし、相変わらずの遅い反応で剣は空振りしてしまった。 「あの、何で攻撃を当てなかったんですか?」 「・・・すいません、俺は攻撃と素早い動作が苦手なんです。キョウカさんとジュンで、盾にぶつかって『ぽよん』と弾んだタイミングで攻撃して下さい!」 「ラジャー!」 「は、はい!」 再び攻撃を受け、バレーボールのトスみたいに盾で受けたムーンスライムを上に向けて弾ませる。 「キョウカちゃん、連携攻撃で一気に倒そう!上に向けて攻撃して!」 「は、はい!」 ジュンの指示を受け、キョウカさんは下から上に銀の杖を振るいムーンスライムを攻撃した。当てるの上手いな・・・俺が下手すぎるだけか? 更に上に飛ばされ、なす術無く落下してくるムーンスライムにジュンはフローガを放つ! 見事な連携でムーンスライムを倒し、アイテムとマニーをゲットした。 他のスライム同様、ムーンスライムもぴょんぴょん跳ねながら、どこかへ去って行く。可愛らしい見た目とは裏腹に強敵だったな。 「キョウカちゃん、ナイス連携!イェーイ!」 「は、はい!ありがとうございます!」 ジュンとキョウカさんがハイタッチする姿を見ながら、俺はふぅ、と溜め息を吐く。 その場で回復魔法を習得したキョウカさんに魔法をかけてもらうと、手の平から発せられた暖かい光りが傷を癒してくれた。 「ありがとうございます、回復魔法って心地よいですね」 「なんか、ズルい!ボクもダメージ食らったし、魔法かけてよぉ~」 「は、はい!少々、おまち下さい」 そんなやり取りをしていた、矢先! 茂みの中から、何かが飛び出してきた!新手のモンスターか!?と、思いきや・・・現れたのは鋭い目をした少年だった。 ツンツンに立った黒い髪、襟足は長め、前髪は紫色にメッシュしている。身長は、キョウカさんより低くいから150cmくらいか? 装備は軽装で黒い胸当てに紫の服、短刀を左右に納めた黒い腰当てを装備している。 「キョウカ、無事だったか!貴様等か、キョウカを(たぶら)かしたのは!」 小さな身体から、凄まじい重圧が放たれる!この感じ、只者じゃない!? 「待って、お父さん!ジュンさんとワルタさんは、私の依頼で同行してくれたの!」 弟じゃなくて、お父さん?聞き間違いか? 少年の迫力に圧倒された俺とジュンは、言葉を発する事ができず頷くばかり。 「・・・今日のところは見逃してやる。行くぞ、キョウカ」 「は、はい。あの、これ報酬の髪飾りです!ありがとうございました」 パーティーから抜けたキョウカさんは少年に手を引かれ、一瞬こちらを振り向き、会釈して去って行った。 「はぁ~なんか、怖そうな人だったね」 「あぁ、そうだな。さっき、聞き間違いかお父さんって呼んでなかったか?」 「うん、呼んでたね。ボクも聞き間違いたかと思ったけど」 見た目は少年だったが、中身は大人なのか?あの雰囲気は、確かに年下とは思えなかった。 だとしたら、大人でもゲームをする方法があると言うことか・・・もしかしたら、純太の両親にジュンを会わせる事もできるのでは? 山林から出ると、空はいつもの快晴に戻り少し陽射しが眩しく感じた。 ギルドに戻った俺たちは、ヘルメスさんにキョウカさんたちについて尋ねてみる事にした。 「はぁ?アタイに個人情報を漏洩しろってのか?」 「で、ですよね。すいません」 たじろぐむ俺を見て、ヘルメスさんは「チッ」と舌打ちする。 「なんか、理由があって聞いてんだろ?簡単に引く程度の理由なら、とっとと帰んなクソガキ」 俺は唾を飲み込み、あらためて尋ねた。 「さっき、キョウカさんのお父さんらしき人と接触しました。もし、大人でもゲームをプレイする方法があるなら知りたいんです!俺、ジュンの両親をジュンに会わせてあげたいんです!」 「ワルタ・・・」 俺の気持ちを知ったジュンが、潤んだ目で見つめている・・・そんな俺たちを見て、ヘルメスさんは「ふっ」と笑って口を開く。 「そういえば、最近町から少し離れた西の森にある村に住み着いた奴らがいたっけなぁ~まぁ、アタイには関係ねぇけど、な」 それは、キョウカさんたちの事だろうか? 「ヘルメスさん、ありがとうございます」 「はぁ?アタイはアイルーロスと話をしてただけさ。なぁ?」 ペルシャ猫のアイルーロスは「にゃ~」と鳴いて、ウインクするように片目を閉じた。 俺たちはさっそく、西の森にある村へと向かう。 村には木造の家が何件か建っており、木の柵で囲みが作られている。 入口に立っている見張りらしき人に声を掛けて見た。 「すいません、人を探してるんですが・・・最近、ここに住み着いた方々をご存知ですか?」 「ん?セインさんとキョウカちゃんの事かな?おっと、あんたら何の用だ。用件次第じゃ、ここは通さないぞ!」 「ボクたち、さっきまで同じパーティーで冒険していたんですが、突然現れたセインって人がキョウカちゃんを連れて行ってしまって・・・ボク、キョウカちゃんと友達になりたくて・・・」 ジュンが泣きそうな顔で訴えかけると、見張りの村人も泣きそうな顔をし始めた。 「友達に・・・なってやってくれよぉ!なんか、キョウカちゃん寂しそうだもんなぁ~良いぜ、村に入りな!」 ジュンは俺の方をチラッと見て、チョロっと舌を出す。 役者め・・・なんか、女の子になってから妙にあざとくなったな。 まぁ、おかげで村に入れたし良しとするか。
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