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運命的再会
スーパーマーケットの屋根から、ヒラリと軽やかに降り立ったフォビーはモナカとステラを見て微笑んだ。
「こんなところで再会できるなんて、これは正に運命ですね。あの日、できなかった続きをしましょう」
「・・・フォビー・ドゥーン」
震えながら呟くモナカ。それを聞いた望月が大剣を構え、モナカを護るように前に出る。
恐怖に怯えるモナカに対し、魔物化していたとは言え母親を殺されたステラは怒りが勝っていた。
「貴様、よくも・・・よくも母さんを!」
怒りを露にするステラを見て、フォビーは申し訳なさそうな顔で答える。
「あ・・・今の、貴女のお母様でしたか。なるほど、我が子を手にかけたくなくて自害したんですね?それなら、納得できました。やはり、欠陥品だったんですね」
その言葉を聞いたセンは、怒りで我を忘れ特攻をかける!
しかし、駐車場のコンクリートごと隆起した地面(大地の壁)に遮られ弾き返され転倒してしまった。
だが、すぐに立ち上がり剣でそれを破壊する!
と、同時に分かっていたと言わんばかりにパーゴスがセンに直撃した。
「クッ!?」
身体が凍結したセンに追い討ちのパーゴスを放つフォビー!
しかし、それはステラがフローガで相殺した。
「おぉ、素晴らしい!ナイスカバー」
ステラに拍手を送るフォビーは、余裕の笑みを浮かべている。
震えたまま、動く事のできないモナカを見て望月は優しく声をかけた。
「お母さんと一緒に、安全な場所へ避難するんだ。サーチィさん、ダークネクロス フォビー・ドゥーンと交戦します。非戦闘員を安全地帯へ誘導お願いします」
そう言って、望月はサーチィの声が届くようにモナカの背中にタッチした。
『モナカさん、運営のサーチィと言います!私のナビに従って移動を開始して下さい』
モナカは母親と手を繋ぎ、フォビーと対峙するステラとセンの背中を見る。
「行くんだ、モナカ」
望月に後押しされ、モナカは走り出す。
ステラは望月に背を向けたまま、問いかける。
「モナカは行った?」
「・・・行ったよ。ステラは、大丈夫か?」
「恐怖より怒りが勝ってるみたい、やれるよ」
「分かった。運営のサーチィさんとリンクする。ちょっと背中に触るぞ」
望月にタッチされ、ステラにもサーチィの声が聞こえるようになった。
『運営のサーチィです!戦闘のサポートをしますので、宜しくお願いします!』
「こちらこそ、アイツだけは・・・絶対に許さない!」
『望月さん達を通して、現状は把握してます。勝つためにも冷静になりましょう!』
サーチィの声はセンにも届き、怒りを抑えるように深呼吸する。
「ステラ、モッチー・・・絶対に勝つぞ!」
怒りをひしひしと感じ、フォビーは首を傾げる。
「貴方達二人を知らないんですが・・・随分と私を恨んでるようですね?逆恨みは御遠慮願いたいですね」
「俺は貴様が拐ったモナカの恋人だ。あれ以来、モナカはしばらく洞窟に入る事すらできなかった・・・貴様の存在は人を不幸にする。消えて貰う!」
「俺は、さっきお前に母親を殺された・・・ついでにステラは俺の姉だ。理由は十分だろ?死ねよ、クソ野郎」
望月とセンの言葉を聞き、フォビーは恍惚とした表情を見せる。
「なるほど、そういう経緯でしたか。それで、そんな目をしてるんですね・・・興奮してきましたよ。たまには、貴方達みたいな美男子で遊ぶのも悪く無いかも知れませんね」
「あんたと話す事は無いんだよ!フローガ・デルタ!!」
不愉快極まりないフォビーの態度にステラはフローガ・デルタで攻撃を開始!
「パーゴス・テトラ」
フォビーは1段階上の魔法で対応し、ステラの魔法を撃ち破る。
残った氷柱はセンが盾で防いだが、更にフォビーは片手でパーゴスを連続で放ちながら魔力回復ポーションを飲む。
『フォビーはアドオンという、魔力の最大値をアイテムで増加させるチートスキルを有してます。それにより、普通じゃあり得ない連続魔法攻撃を仕掛けてきますので踏み込む際は要注意です。使用する魔法は氷と大地。更に、広範囲の融合魔法も使ってきます』
サーチィからフォビーの情報を聞き、望月は問いかける。
「具体的な弱点はありますか?」
『残念ですが、弱点という弱点は見当たりません。以前のデータだと、魔法の熟練度が低かったのですが・・・どうやらレベルアップしているようでパーゴスの威力も増してます。ただ、魔法使いなので単純に物理攻撃を一撃与えるだけでも一気に優勢になるかと』
「・・・以前よりレベルアップしている、か」
望月の呟きが耳に入り、フォビーは疑問を投げ掛ける。
「何故、それを知っているんですか?もしかして、私とセインの対戦データでも残っているんですかね。私達は不完全復活状態なので、人間の魂を吸収しないと数時間で崩壊してしまうのですが・・・魂を吸収すると、ゲームで言うところの経験値が入るんですよ」
モナカとステラを拐った時、こいつは恐らく初級か中級職だったはず・・・それが、あんな威力のパーゴスを放てるくらいレベルアップしていると言う事は・・・そう思いながら、望月は聞き返す。
「何人犠牲にして、その力を手にした!?」
フォビーは何食わぬ顔で答える。
「カウントしてないので、正確な数値はわからないですね。まだ余裕が無かったので、お楽しみ無しで即殺害でしたが・・・ステラさんでしたっけ?貴女はちゃんとしてあげますから、ご案内を」
「・・・そうはならないよ。あんたはチ◯ポコ、ぶっ潰してから殺してやる」
「良いですねぇ、その憎しみに満ちた表情。興奮してしまいます」
『フォビーは持久戦に持ち込むつもりです。今、そちらに向かっているプレーヤーがいるので無理に攻めず凌いで下さい』
「・・・分かりました」
いくら怒りを強めても、それで実力差は埋まらない。
悔しく思いながらも、望月は冷静に現実を受け止めた。
踏み込んでこない三人に対し、フォビーはパーゴスを撃ち止める。
「こんな初級魔法の弾幕も越えられないんですか?あなた方は、威勢ばかりでショボいですね」
センは眉をしかめるが、サーチィが呼び掛ける。
『挑発に乗らないで!フォビーの足元を見てください』
良く見るとフォビーの立っている場所を中心に、コンクリートに亀裂が入っていた。
『大地の魔法で罠を仕掛けてます。一定距離まで近づくと隆起するか、落とし穴になるかだと思います。増援が来るまでは今の距離をキープして戦いましょう。必ず、好機は訪れます!焦らずいきましょう』
サーチィのアドバイスが今にも怒りで我を忘れそうなステラとセンの心を静める。
「本当にありがとう。頼もしいです」
『どういたしまして!』
攻めてこない・・・増援が来るのか?なら、待ちより攻めの方が有効か。
戦法を変更し、フォビーは魔力を高める。
「どれ程の威力か、貴方達で試してみましょう。パーゴス・ヘキサ!!」
特化魔法使いの最大氷魔法、パーゴス・ヘキサ!巨大な氷柱が六本、上空からミサイルのように飛来する!
センは盾を最大まで巨大化させ、ステラと望月は迎撃すべく魔法を放つ!
しかし、ステラのフローガ・テトラと望月のフローガでは六本中、二本までしか対応できずセンは盾で四本の巨大氷柱を受ける。
「何て威力だ・・・しかも、盾で防いだのに身体が凍結し始めてるだと!?」
下半身が凍結していくセンに対し追撃しようと右手をかざすフォビー!
「させない!フローガ・テトラ!!」
ステラの攻撃に対し、左手で魔法を放つ。
「パーゴス・デルタ」
なんとフォビーは中級魔法でステラの上級魔法を相殺した。
「練度不足ですね。レベル上げをサボってましたか?」
圧倒的な実力差に絶望する中、突如として無数の投げナイフがフォビー目掛けて投擲された!
「ガイア・シールド」
大地の壁で攻撃を防いだフォビーは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「不意打ちとは、相変わらず容赦が無いですね」
その視線の先には、投げナイフを構えフォビーを見据えるセインの姿があった。
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