28人が本棚に入れています
本棚に追加
絶対防御領域
セインはワルタ、マキナと共にジュンとキョウカの元へ向かっていた。
しかし、その途中で望月達がフォビー・ドゥーンと交戦していることをサーチィから聞き、セインは足を止める。
「セインさん?」
「本来なら、愛娘であるキョウカの元へ向かうべきなのだろうが・・・何故か俺が行かなければならない気がする。ワルタ、マキナ・・・キョウカの事、頼めるか?」
「分かりました」
「オッケー!任せるぉ!」
こうして、セインは再びフォビーと対峙する道を選んだ。
「皆、大丈夫か?」
「セインさん・・・」
セインの姿を見て、思わず涙ぐむステラ。
「セインさん!」
素直に喜びの声をあげるセン。
「来てくれて、ありがとうございます」
感謝を伝える望月・・・フォビーはセインが彼らから信頼されているのだと、すぐに理解した。
「流石、我らが英雄セイン・・・と言ったところですかね。仲間からの信頼も厚いようで」
「貴様に言われると、嫌味にしか聞こえんな」
鋭い視線を向けるセインに対し、尚もフォビーは笑みを浮かべる。
「本心から、ですよ?彼らの前で貴方を惨殺すれば、最高の表情を観賞できそうです」
「貴様はまた、越えてはならない境界線を越えた・・・再び地獄へ還してやる」
「今度は貴方が落ちる番ですよ!パーゴス・ヘキサぁ!!」
六本の巨大な氷柱が上空からセイン目掛けて落下!
氷塊が砕け散り、氷の破片が舞う中・・・右手に黒い短刀と左手に白い短刀を持ったセインが一陣の風が吹き抜けるかのようにフォビーに迫る!
「が、ガイアシールド!」
大地の壁が隆起する・・・より早くセインはフォビーの懐に飛び込むが、そこで望月が叫ぶ!
「セインさん、地面に罠が!」
崩れ出す地面にセインは投擲用のナイフをばら蒔き、それを足場にして斬り込む!
フォビーの横を飛び抜けて着地し、セインは振り向く。
「浅かったか」
フォビーの左頬が裂け、血が飛び散る。
「あの巨大氷柱を無傷で突破し、ガイア・シールドをすり抜け罠まで見切るとは・・・貴方の方がよっぽどチーターですよ」
「威力はありそうだが、練度不足じゃないか?止まって見えたぞ」
「確かに、覚えたてですからね。大技はやはり、隙が大きい。貴方に対しては不十分なのが分かっただけでも収穫ですよ」
望月達は、あまりにも自分達とレベルが違いすぎる攻防を目の当たりにし呆気にとられていた。
『・・・残念ですが、望月さん達のレベルではセインの動きに合わせた連携は難しいですね。今は、様子を見ましょう』
サーチィの言葉に望月は素直に従った。
「悔しくですが、いう通りです。自分たちにできる事があれば指示をお願いします!」
望月達はセインの邪魔にならないように、戦闘領域から距離を取る。
「私達の戦いに彼らはついてこられないようですね」
「そうやって人を見下すのは相変わらずだな。足元を掬われるぞ」
「少なくとも、貴方を見下したり侮ったりはしませんよ。以前は、自分のやりたい事を優先し無法者等のスキルを拒否しました・・・攻撃する事ができても、反撃されたら困りますからね。そんなリスクを負わなくても、工夫を凝らせば目的を達成する手立てはありましたから・・・しかし、その考えは間違いでした。結果、私は貴方に無法地帯の特性を利用され大敗を喫した」
「存外、センチメンタルな奴だな。昔話に花を咲かせたいのか?」
「回りくどい言い方をしましたね。ですから、今回は習得可能なチートスキルは全て身につけてきました」
そう言って、フォビーはスキルを発動させる。
「氷の盾・・・フルオート」
しかし、フォビー自身には何の変化も見られない。
セインは変速スキルを発動させ、斬り込む!
「パーゴス!」
隙の少ない初級魔法で弾幕を張るフォビー!
しかし、セインはいとも容易く弾幕をすり抜けて斬りかかる!
ところが短刀を振るうと同時に突如として空間に氷の盾が出現し、セインの連続斬撃を防ぎダメージを与えられない!
「ガイア・ファング!」
地面が隆起し、鋭い牙のような形に変化しセインを襲う!
攻撃の際、一瞬動きが遅くなるタイミングを狙った魔法攻撃がセインの肩をかすめる。
一旦、距離を置いたセインはフォビーの魔法を分析する。
「やれやれ、相変わらず素早いですね。あのタイミングでもかわしますか」
「・・・オートで氷の盾を展開するスキルか?だが、発動中は氷の魔法は使えないようだな」
「えぇ、ですが前のように魔力が無くなるのを待っても無駄ですよ?私は魔力消費量半減スキルも獲得しました。加えて、アドオンもあり魔力回復アイテムもマスターから大量に頂きましたから」
セインは手数を増やす為にナイフの投擲も加えて攻撃を仕掛ける!
ナイフと合わせた同時攻撃に対しても氷の盾は反応し、セインの攻撃を完封!
『ステラさん、望月さん!セインが退くタイミングで魔法攻撃を!』
さっきと同じようにガイア・ファングを仕掛けるフォビーだったが、同じ攻撃は通用しないとばかりに完全に回避し飛び退くセイン。
そのタイミングで望月達は魔法攻撃を放つ!
しかし、それさえも氷の盾に防がれてしまった。
「意識外かつ、死角からの攻撃にも対応できるの!?」
攻撃を防がれ、ステラは思わず声を出す。
「氷の盾フルオートは攻撃の際に発生する魔力、闘気、殺意等に反応し的確かつ適正な強度と大きさで展開されます。つまり、絶対防御という事です」
「だが守り一辺倒では貴様とて勝ち目はあるまい?俺の仲間には、常軌を逸した火力と放出力の魔法攻撃が使える者もいる。このまま、貴様を抑え込み増援を待てば済む話だ」
「確かに、氷の盾の耐久と展開スピードを有耶無耶にするような強力な魔法は防げるかどうかわかりませんが・・・私に攻撃の手が無いと判断するのは、些か見積りが甘いのでは無いですか?出でよ、氷の魂!」
顔を歪めながら、フォビーは胸に手を当て身体から青い球体を抜き取り空へと放り投げた。
「何、あれ・・・魔力の塊?」
空中でホバリングする青い球体から、魔力を感じるステラ。フォビーはまた、魔力回復アイテムを取り出し口へと運ぶ。
そうはさせまいとナイフを投擲するも、やはり氷の盾に防がれてしまった。
「この氷の魂は、私の代わりに氷の魔法を使う事ができます・・・少々、ダメージが発生するのが難点ですがね。さぁ、私が何をするか理解できましたか?」
周囲の空気が急激に冷たくなり、セインや望月達の吐く息が白くなる。
「なんだ・・・急に真冬みたいに寒くなったぞ?」
センがそう呟くと同時にセインはフォビーが何をしようとしているか察知し、望月達に向かって叫ぶ!
「皆、気をつけろ!広範囲の融合魔法が来る!」
最初のコメントを投稿しよう!