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ケダモノ共が征く
12:28
ショコ、テッコ、弓子の三人はワルタ達と別行動を取っていた。
「マップを開く。と、イメージするだけで地図が視界に浮かびあがるし、アイテムバックの中身もちゃんとゲームと同じ内容になってるわね」
「せやな、マップ開くと青い点と赤い点があるのは・・・」
「青は仲間、赤は敵・・・でしたよね、サーチィさん?」
『はい!それと、転移の前に言いましたが・・・この世界で死んでしまうとアンスロはネクロスにネクロスはゲームの世界に強制送還されます。再度、戦線復帰はできないので注意して下さい!』
「わかりました。とりあえず、青と赤が重なりあっている所はプレーヤーとダークネクロス、もしくはさっき言ってた魔物化した人と交戦中のところね」
弓子はマップを開き確認する。
「ほな、ワルタはん達はセインさんと合流してジュンちゃん、キョウカちゃんのとこに向かっとるから・・・ウチらはどないする?」
「あたし達の家は、ここからそう遠く無いし・・・まずはお母さん達を学校に避難させなきゃ!」
「そうね。ここからだと、テッコの家が一番近いから先にテッコ、次にショコの家に行きましょう」
「弓子のお父さんは?」
「タクシー運転手だからね・・・どこにいるか分からないし、ラインはしておいたから最寄りの安全地帯に移動していると思うわ。さぁ、行きましょう!」
テッコの家族は無事に保護し、すぐに鈴木と工藤により学校へと移動可能となった。
「鉄子、何だかわからないけど・・・気張りぃや!」
「オカン達も、きいつけてな!」
母親と挨拶を済まし、次はショコの家へと急ぐ。
道中、ワーウルフやミノタウロスと接敵したがショコ達の敵では無かった。
しかし、元は人間だという事もあり殴った拳が痛くもあった。
「・・・この人達も、この一件が終われば元に戻れるのかな?」
『断言できませんが、ダークネクロスを倒せば恐らく魂が解放されるので後々、生き返せる可能は・・・あるかも知れません』
サーチィの話を聞き、ショコは胸を押さえる。
「野放しにすれば、次々と一般人を襲うわ。気持ちを強く持って戦いましょう」
「・・・うん」
一方、その頃・・・突然、転移させられたメイド服姿のとある二人はマイペースに町を歩いていた。
「なぁ、ビソン。ここって日本だよな」
「そうね、パーサ。コンビニが至るところにあるな」
無人のコンビニに入って、パーサとビソンは腹ごしらえをする。
「うま!食うの初めてだけど美味しいぞ、このパスタ!」
「確か、焼きそばとか言う料理だ。私は・・・この唐揚げを頂く」
店内の食品を手当たり次第に食べ、腹が膨れたところで二人は話し合いを始めた。
「さっき、マスターからテレパシーみたいなの来てたけど、どうする?」
「私達はそもそも生きてる。別に人間の魂を吸収する必要は無いからな。プレーヤー達との最終決戦なら、弓子もどこかにいるハズだ」
「やっぱ、それだよな。私らもレベルアップしたし、次は勝たねえとな!」
コンビニから出ようとするビソンをパーサが呼び止める。
「なぁ、これってなんだ?」
「ゆでたまご・・・じゃ、ないな。パッケージの写真からして半熟たまごだろう」
「うまそうだな。ほい」
二人は半熟たまごを手に、コンビニから出る。
「た、助けて!せめて、妹だけでも・・・」
道路の反対側で、まだ小学生くらいの幼い二人の少女が見覚えのあるダークネクロスに襲われていた。
「アハハハハ!見逃す訳が無いでしょう?ほら、もっと泣き叫びなさい、命乞いをなさい!ホラホラホラぁー!」
それは、パーサ達と同じく教会に配属されていた料理担当のメイド、ハニバだった。
少女達に包丁を振り下ろそうとするハニバ!
その顔面に半熟たまごが2つ投げつけられ、グシャっと潰れ・・・ハニバの顔が、たまごまみれになった。
「あ・・・何やってんだよ、ビソン」
「そう言うパーサもたまご投げただろ」
頭をポリポリ掻きながら、パーサは言う。
「だって、私・・・アイツ嫌いなんだよ。身動きとれないネクロスなぶったり、自分より弱そうなヤツとしか戦わないだろ?」
「まぁ、同感だな」
ハニバは二人を睨みつけ、ヒステリックに叫ぶ。
「貴様ら・・・見張り番ふぜいが!エディエス様の側近である私に楯突くとは、良い度胸ね!」
その言葉にカチンときた二人は、道路を渡ってハニバへと向かって行く。
「はぁ~お前さぁ、勘違いすんなよ?偉いのはお前じゃなくてエディエスだろ」
「まぁ、今さらエディエスなんて関係無いがな」
ハニバに襲われていた少女達は、ガタガタと震えたまま抱き合っている。
「大きい方、お前は姉か?」
ビソンに尋ねられ、姉は声を震わせ「はい」と答える。
「だったら、震えてないで妹を連れてさっさと行け」
少女は立ち上がり、妹の手を引いて走り去った。
「何なんだ、貴様ら・・・人間の魂を吸収しなければ塵になるんだぞ!?」
「それ、負けて死んだ奴らだけだから」
「お前らと一緒にするな」
「貴様ら・・・どこまでもコケにしやがって・・・シューセンド、ボーショック!」
ハニバに呼ばれ、雪原無法地帯でワルタ達に敗れた悪徳商人シューセンドと料理人ボーショックが姿を現す。
「何事デース?」
「ぶひ?」
「この二人は裏切り者よ・・・始末なさい!」
ちょっと面倒くさそうに、シューセンドとボーショックはチートスキルを発動させる。
「ぶひ、チートスキル・・・モードボア」
「了解デース。チートスキル・・・モードコアラ」
ボーショックは二人を視界に収め、チートスキルで空腹状態に陥れようとした。
「何を見てる・・・気持ち悪い!」
チートスキルを発動させていないにも関わらず、ビソンは近くに乗り捨てられていた軽自動車を持ち上げてボーショックに投げつけた!
「ぶ、ぶひぃ!?」
一気に間合いを詰め、フレイルを振り下ろして車ごとボーショックを叩き潰す!
「やりマスねー!デスが、このアイテムがあれば・・・」
ポケットからアイテムを取りだそうとするシューセンドの両腕がパーサのフランベルジュに斬り落とされた。
「は、速すぎデェース!?」
更にビソンはハニバに急接近し、胸ぐらを掴み上げて起き上がろうとしているボーショックに向けて投げ飛ばす!
まるで砲弾と化したハニバとボーショックが激突し、二人ともダウン。
チラッと道路を見てビソンは呟く。
「流石にコレは通常モードでは無理そうだな・・・モード バイソン」
髪が牛の角のように変化し、身体はふた回りは大きくなり筋骨隆々!
バスを持ち上げ、ハニバとボーショック目掛けて叩き落とす!
バスは爆発し、炎上・・・ハニバとボーショックは木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「そっちは片付いたか?」
スキルを解除しビソンが振り向くと、そこにはパーサに斬り捨てられたシューセンドの首が地面を転がっていた。
「な、何なんデスかー!?何故、恩義あるマスターを裏切るような真似を!?」
「はぁ~?別に、頼んで生き返して貰った訳じゃ無いし恩義なんて1㎜も感じてないわ」
「そう言う事だ。それにしても、首だけで良く喋る」
「恩を感じ、仕える事すらできないとは・・・とんだ獣デース!」
「耳障りだ」
ビソンはシューセンドの頭を踏み潰し、永遠に黙らせた。
二人は燃え盛るバスの炎を背にして歩き出す。
「ウォーミングアップくらいにはなったか、ビソン?」
「そうだな。さて、弓子を探すか」
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