決着の一撃

1/1
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/251ページ

決着の一撃

弓子が構えた月弓が、分身するように左右に広がり空中で制止。 左右に五本、計十本の随従の光弓を翼のように携える。 随従の光弓は自立行動し、矢を放つ! 前回の戦いでは、計11本の弓からなる圧倒的な物量攻撃に敗北したパーサとビソン。 脳筋的な二人だが、戦闘に関しては恐ろしくる頭脳を持ち合わせている。 レベルアップして素早さが増したパーサは矢を次々と斬り落とし、ビソンは弓子を攻撃する・・・のでは無く、浮遊する弓を狙う。 「私では無く、弓を?」 多少のダメージを受けながら、ビソンは自立行動する弓を破壊する! 武器破壊性能の高いブラックフレイルの特性を活かした戦法、またビソンは自立行動する弓を弓子自身がマニュアル操作している訳では無いと前回の経験を踏まえての行動だった。 浮遊する弓の動きは数パターンあり、基本的には単純に追尾後に連続して矢を放つ。 距離をとる動きを見せ、ば追いかけてきたところを狙える。 柄の先に掴み、リーチの長い攻撃で弓を次々と破壊するビソン! 弓子は浮遊する弓を自分の元へと退かせる。 しかし、すでに2本は破壊されており弓子の火力をしっかりと低下させていた。 「対策済みって訳ね。まだまだ戦いが続く中、クールタイムの長いジョブチェンジスキルは使いたく無かったけど、あなた達を相手には甘すぎたわ」 自らの甘さにより、クルスが敗北する結果となった・・・そう思っていた弓子だったが、それも違うのだと理解した。 シンプルにパーサとビソンが強い。 前回のように削って大技でトドメを刺すのは難しい・・・何か、きっかけが無ければ勝てない。 無数に放たれ続ける矢を全て斬り落とす事は不可能、時に矢がパーサとビソンの頬、腕、太ももをかすめて血が舞う中、致命傷だけは食らわないように間合いをドンドン詰めて行く。 風の魔法で宙を舞い、空中から攻撃を仕掛けようとする弓子だったがそれも読まれていた。 「パーサ!」 「分かってる!」 パーサはバッグから球状のアイテムを取り出し、空へと放り投げる! 空中戦ができない二人は、空中戦に持ち込まれないようにする為に当然の如く準備をしていた。 球状のアイテムは空中で爆発し、空に粉が舞う。 「これは・・・まさか!?」 アイテムの正体は、珍場も使った事がある『小麦粉玉』パーサはビソンの肩を踏み台にし飛び上がり、火のついたマッチ棒を粉の中に投げ込む! そして起きる大爆発!! 粉塵爆発に巻き込まれないように地上に降下する弓子だったが、爆発に巻き込まれバランスを崩した。 そこにビソンが突進する! 「貰った!」 しかし、ビソンは急に割って入ってきた何者かのカウンターパンチを受け、その場に跪く。 「なんや、ピンチみたいやな」 弓子の窮地を救ったのは、金色に輝く炎を身に纏ったテッコだった。 「・・・テッコ、戻ってきてくれたのね。助かったわ」 「珍しく素直やん。ガチでピンチだったみたいやな。クルスは?」 「やられたわ。この二人、今まで戦ったダークネクロスの中でも最強級よ」 「ここに来る途中、焼き付くような闘気を感じた・・・せやから、ジョブチェンジスキル発動させて飛び込んだわ。判断は正しかったみたいやな」 ビソンは口にたまった血を「ペッ」と吐き捨て、割れた眼鏡を外してテッコを睨む。 「大事な眼鏡が、また壊れた・・・誰か知らないが高くつくぞ?」 「ウチは弓子の数少ない友人、テッコっちゅう友達思いのナイスガールや。冥土の土産に覚えとき!」 構えるテッコを前に、ビソンもフレイルを構えパーサが側に駆け寄り、弓子も弓を構えた。 「新手か」 「真打ちや」 「弓子もそうだが、貴様も口が減らないな。だが、面白い・・・第2ROUNDといこうか」 ビソンはテッコに、パーサは弓子に向かって攻撃を仕掛ける! ビソンの三節棍型フレイルから繰り出される連続攻撃を紙一重でかわすテッコは、丁寧にジャブを当てていく。 初見で、この連続攻撃を回避し反撃まで出来るだと?何者だ、コイツ!? テッコの強さに、舌を巻くビソン・・・しかし、それはテッコも同じだった。 ほんまは、一撃重いのをぶちかましたいとこやけどジャブしか当たるイメージが湧かん。下手に大振りかましたらつけこまれる! 普通なら、割って入った際のカウンターで終わっていてもおかしくない。 それを耐えた体力、隙あらば必殺の一撃を決めようとする気迫! テッコの勘が、ビソンはダレン以上の猛者だと警告を発していた。 攻撃を見切るセンスが段違いだ。このままだと、いずれやられる。 ビソンはここで、一か八かの賭けに出た! ダメージ覚悟でテッコを掴みにかかる! 一方、パーサと戦う弓子は随従の光弓が少なくなっている事に気づく。 粉塵爆発に巻き込まれ、また二張失っていた。 普通なら、それでも七方向から攻撃をされたら一溜りも無いが、パーサは戦いの中で随従の光弓の攻撃パターンを見切りつつあった。 後ろに目があるかのようにノールックで死角から射ちこまれる矢を、時には紙一重で回避し、時には剣で斬り落とす。 「、私らにトドメを刺さなかった事を後悔させてやるよ!」 間合いをドンドン詰めてくるパーサに対して、弓子は微笑む。 「あら、後悔するのはあなた達よ。性懲りも無く、挑んできた事をね!」 弓子の放った矢をかわし、パーサは更に踏み込もうとする! しかし、その瞬間!グサッ・・・っという音と共に何かがパーサの脇腹に突き刺さった。 「は?」 それは、弓子がクルスに渡した雷神の剣だった。 「矢で剣を弾いて・・・最初から私を狙ったんじゃなかったのか!?」 「ブロンテ・チェイン!」 更に、その名の通り雷属性を持つ雷神の剣にブロンテをチェインする事により通常の倍近い電撃が発生! 「ぐあぁぁぁぁ!?」 間も無くスキルが切れる弓子は、残る六張の随従の光弓の矢と共に六芒星型の巨大な矢を放つ! 「六芒星の矢(ヘキサグラムアロー)!」 十芒星の矢(デカグラムアロー)より威力は劣るが、ビソンに比べれば防御力が劣るパーサには十分なダメージだった。 倒れるパーサ、満身創痍の弓子・・・しかし、そこにテッコの大声が響く! 「弓子!」 掴みかかってきたビソンに連打を浴びせかけたテッコだったが、倒れ際に右脚を掴まれ宙吊り状態となっていた。 「脚、射抜けぇ!」 そのは、ビソンでは無いと察した弓子は躊躇無く掴まれたテッコの右脚を貫く! 自分を狙ってくるかと思っていたビソンにとって、それは完全に予想外だった。 右脚を捨て、テッコは着地と同時に残る左脚で地面を蹴りビソンの懐に入り込む! ダメージを受けた為、鬼神の籠手の効果により更に攻撃力が上昇! 「必殺ぅぅぅ!ナックル・フィストォォォォ!」 鍛えぬかれた腹筋をも撃ち抜く拳の威力にビソンの巨大が倒れているパーサの元まで一直線に吹っ飛んでいった。 「ぐっ・・・う・・・あんな、ダサイ名前の技に・・・やられ・・・」 何とか立ち上がろうとするビソンだったが、気持ちとは裏腹に身体は反応しない。 「はぁはぁはぁ・・・ッソたれ、脚が痛いわ」 「あら、ゴメンね。ゲームじゃ仲間を攻撃する事なんて無いから加減が分からなかったわ」 そう言いながら、弓子はテッコに肩を貸す。 テッコはバッグから回復アイテムを取り出し、倒れているパーサとビソンを見つめる。 「寝とけよ、ほんまに・・・こっちはスッカラカンや」 ジョブチェンジスキルが解除されたテッコは、そう言いながら回復ポーションを飲み干した。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!