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君を探しに・・・
「塵にならへんな・・・頑丈な奴等や」
今、倒さなければ更に強くなって立ちはだかるだろう。
そう思いながら、弓子は気絶している二人に弓を向けた。
「待って!」
女の子の声が公園に響き、弓子は思わず手を止める。
それは、パーサとビソンに命を救われた小学生の姉妹だった。
「おーい!ここは危ないって・・・テッコ、弓子?」
その後ろから、コメマルとモカヒンが駆けてきた。
脚をアイテムで再生させたテッコが、二人に尋ねる。
「なんや、この子らは知り合いか?」
テッコの問いに答えるモカヒン。
「いや、たまたま見つけたから安全地帯に連れて行こうとしたんだが、それを伝えたら連れて行きたい人達がいるから探すって聞かなくてな。お嬢ちゃん達が探してたのって・・・まさか、このメイドか?」
コメマルは倒れているパーサとビソンを覗き込む。
「レウたんと同じメイド服・・・ダークネクロスか?」
「そうよ。かなり危険なダークネクロス・・・なんだけどね」
姉妹はパーサとビソンを庇うように両手を広げて弓子の前に立ちたちはだかる。
「この人達は、私達を助けてくれたんです!悪者扱いしないで!」
「・・・助けたって、ほんまかいな?」
姉妹から経緯を聞き、弓子とテッコは困り顔で顔を見合わせる。
「なぁ、テッコに弓子・・・このダークネクロスは俺達に任せてくれねぇか?」
コメマルの言葉にテッコと弓子は勿論、モカヒンも驚いた。
「おま・・・何言ってんだ?テッコと弓子が苦戦した相手を俺らがどうにかできるとでも!?」
「だって、ダークネクロスの中にも良い奴はいるんだよ!レウたんみたいに・・・もし、俺がコイツらにヤられても文句は言わねぇ!頼む!」
溜め息を吐き、弓子は姉妹を見る。
「あなた達が、大人しく私達と安全地帯に行くなら・・・トドメは刺さない。どうする?」
姉妹はその言葉を信じ、弓子とテッコと共に歩きだす。
振り返る姉妹にコメマルは手を振る。
「大丈夫、心配すんな~」
頭をポリポリ掻いているモカヒンにコメマルは申し訳なさそうに言った。
「すまねえ、相棒。万が一って事もあるから、お前も安全地帯に・・・」
「はぁ?一緒に行くに決まってるだろ。それに、一人でこんなガタイの良い女二人も運べんのか?」
二人はパーサとビソンを担いで近くの雑居ビルまで移動する。
「はぁ、はぁ・・・ゲームと違って普通に汗も出るし疲れるもんだな」
額の汗を拭いながら、コメマルは天井を見上げる。
「ふぅ・・・とりあえず、気絶しているだけだとは思うが手当てするか」
コメマルはビソンに、モカヒンはパーサに体力回復ポーションを飲ませる。
「・・・う・・・なん、で、生きて・・・誰だ?」
目を開けたパーサは、起き上がろうとするが身体に力が入らず首だけをモカヒンに向けた。
「あ~・・・お前らに助けられたって子供達の話を信じたお節介ハゲに頼まれて、お前らを介抱してたんだが・・・」
「頼んでねぇだろ。お節介はお前だよ」
「あ?」
「んだコラ、やんのか?」
急にガンのつけあい、飛ばしあいを始めたコメマル達を無視してパーサは倒れているビソンに声を掛ける。
「生きてるか、ビソン?」
「・・・また、生き長らえたのか」
悔しさからか、ビソンは明後日の方を向いたまま身体を震わせていた。
「まぁ、生きてりゃ好機はあるだろ・・・泣いてるのか?」
ビソンは涙を拭い、上体を起こす。
「あの二人が私らを助けたのか?見覚え無いが・・・」
「さっき助けたガキ二人に頼まれたんだとよ」
ビソンが目を覚ました事に気づいたコメマルが、ゆっくりと二人の元に歩み寄る。
「ポーション一本じゃ、まともに歩けねぇか」
そう言って、バッグからポーションを二本取り出す。
「ハゲ、あんた分かってやってるのか?私らはダークネクロス・・・」
「でも、悪い奴じゃ無いんだろ?レウたんと同じでさ」
「レウたん?誰だ、それは」
眉をしかめるビソンにコメマルは続ける。
「レウォンって知らないか?あんたらと同じメイド服だったから、てっきり仲間かと・・・」
「「レウォンだと!?」」
驚愕する二人に、コメマルは照れ臭そうに言う。
「そう、俺の彼女なんだ。まぁ、死んじまったけど・・・かくかくしかじか・・・」
聞かれてもいないのに馴初めを語りだすコメマルを見てモカヒンは、また頭をポリポリと掻いて溜め息を吐く。
「そんな事があったのか・・・あの、レウォンが・・・信じられん」
「でも、アイツって冷血冷酷だけどちょっと抜けてたよな。なんか、分からんことも無いような・・・」
少しずつ回復してきたパーサとビソンは、話をしながらコメマルが用意したポーションに手を伸ばす。
「ちょーと待った!ポーションやるから、レウたん探すの手伝ってくんね?俺達だけだと、鬼強ダークネクロスと出くわしたらキッツいからよ」
「なんだよ、タダじゃないんだ。私は別に良いけど・・・ビソンは?」
「そうだな。借りは返さないと気持ちが悪い。だが、レウォンが居たとして・・・人の魂を奪っていたらどうするつもりだ?」
「そん時は・・・そん時、考えるわ。ほらよ」
コメマルが二人にポーションを渡すのを見ながらモカヒンは取り出したタバコに火をつける。
「なんか、現実なのにゲームのアバター姿でタバコ吸うって変な感じだな」
「あ、それ私も人間だった時に吸ってたわ。ゲームの世界にタバコなんて無いもんな。なぁ、一本くれよ」
モカヒンはパーサにタバコとライターを渡し、窓から外を眺める。
「お~い、このライター火ぃつかないよ」
「ちょうど切れたか・・・」
そう言って振り向くと、目の前にパーサの顔がありモカヒンのくわえたタバコにパーサは自分がくわえたタバコを軽く押し当て火をつけた。
「・・・」
「久しぶりだぁ~一服したら、探しに行こうか。あてはあるの?」
タバコを吸いながら、パーサはコメマルに問いかける。
「とりあえず、マップ開いて赤い点を便りに見て回るしかねぇかな。ってか、大丈夫かモカヒン?顔が真っ赤だぞ!?」
「な、なんでも無い・・・」
こうして、四人は一時的に手を組みレウを探しに行くのだった。
一方、その頃・・・不完全復活を遂げたレウも同じくコメマルを探していた。
「ゲームのプレーヤー達が魔物やダークネクロスと戦ってる。きっと、コメマルも居るハズ・・・会いたい」
そんなレウの前に姿を現したのは・・・コメマルでは無く、兄ドウンだった。
「レウォン、お前も復活していたのか」
「・・・兄様」
ドウンはニヤニヤしながら、引き連れている土人形をレウに見せる。
「まだ、数が足りん。手伝え」
後退りしながら、レウは首を横に振る。
「もう、自分は悪い事しない。コメマルに嫌われる」
「はぁ?何言ってやがる。お前は俺の言うこと聞いてりゃ良いんだよ!」
踏み込みながら、ドウンはレウの腹に蹴りを入れレウは地面に倒れかけた・・・が、誰かがレウを優しく受け止めた。
「う・・・コメマル?」
「ガハハハハ!残念だが、ワシだ!覚えとるか?」
レウを受け止めたのは、ノーキンだった。
「兄者、知り合いか?」
その後ろにはチテキーもおり、ドウンとノーキンは睨み合う。
「この娘は前に話したコメマルの彼女だ。そして、この輩は・・・この娘のクソ兄貴だ」
「てめぇ、あの時の・・・煽り眼鏡女は居ねえみてぇだなぁ?ハユンみたいな俺好みの土人形はまだ出来てねぇが・・・8体も居れば十分だ。行けぇ!!」
ドウンは大鉈を振りかざし、土人形達をノーキン達にけしかける!
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