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アシストのサーチィ
「さて、とりあえず何をどうしたものか」
再会の喜びを分かち合った俺たちは、ゲームを進める事にした。
「なぁ、ジュン。ステータスとかってどうやって見るんだ?」
「ワルタ、基本操作のとこ見なかったでしょ?左手の甲に何個かボタンあるよね?1番右のを押してみて」
「あ、なんか空中に俺の姿と円形のグラフが映ったぞ?」
「それがステータス画面ね」
グラフの中心に、小さなピンクの丸があるが・・・これが何を示しているかは表示されていない。
「で、その画面の左上にフレンドって表示されてるでしょ?触ってみて」
「あ、ジュンって表示されたな。これをタッチするのか?」
名前をタッチすると『パーティーに誘いますか?』と表示された。
とりあえず『はい』を押すと・・・『承認されました』のメッセージの後にジュンのステータスも表れた。
「パーティーを組むと、仲間のステータスも表示されるのか。なんかジュンの丸は外側が一部分だけ、うっすら青くなってないか?」
「多分、チェニックを装備してるからかな?」
「え、男女で見た目違うとかじゃないのか?」
「ワルタ、事前登録の時にアンケート答えてないでしょ。初期装備特典有りって書いてたじゃん」
あぁ、面倒くさくて飛ばしたっけ・・・やっておけば良かった。
ちょっと後悔しながら道を歩いて行くと、何やら町が見えてきたぞ!?
「うわ、いかにも昔のヨーロッパって感じの町並みだね!」
「凄いな、本物みたいだ」
建築物、石畳の道、本で見た中世ヨーロッパそのものだ。
「わくわくしてきたね、ワルタ!」
「そうだな、ジュン!さあ、町へ入ってみよう」
と、思った。矢先!
画面に光る文字が表れた!
『チュートリアルー!!』
俺たち2人の行く手を阻むように、森の木陰から何かが飛び出して来た!
それは、バランスボールくらいのサイズをしたぷよぷよした青い物体・・・いや、まん丸な目があるから生き物か?
「はわわわわわわわ!ワルタ、これスライムじゃない!?」
興奮気味のジュンを見ながら、俺は尋ねる。
「スライム?」
「ワルタ、スライム知らないの?こういうゲームにはつきものの愛すべきザコキャラだよ!うわぁ~可愛いねぇ」
「可愛いか?目の虚無感が不気味すぎるんだが?」
画面・・・というべきか、空間に映し出された光る文字が文面を変えていく。
『さぁ、まずはスライムを倒してみましょう!戦い方を教えますよ!』
「スライムと戦闘するらしいな」
「・・・戦うのは、こういうゲームのお約束だけど、殺すのは嫌だな」
ジュンの表情が曇っている。そう、ジュンは優しい。家に入ってきた虫なんかも、外に逃がしてあげる姿を子供の頃は度々見かけた。
そんなジュンに答えるように光る文字が、また文面を変える。
『あらあら、モンスターの心配をするなんて心が優しいプレーヤーさんですね!でも、大丈夫!モンスターは戦意を失うとアイテムを落として逃げていくだけですから!』
え?なんだ、このゲーム・・・定型文じゃなく受け答えしてるのか!?驚くことばかりだが、これはまた驚かされた。
「良かった!なら、遠慮いらないね」
そう言って、ジュンは袖をまくりするような仕草で右腕をあげる。
これ、純太の癖なんだよな。やる気出てきた時にやるポーズ。
生前の純太を思い出す・・・可愛いなぁ。控えめに言っても、スライムの100倍は可愛い。
『まず、武器をプレゼントします!どの武器を使うかでレベルアップした時のステータスも変わりますよ!』
空間に映し出された武器は、長剣、短剣、杖、斧、槍、弓、籠手、鞭だった。
「うわぁ、いっぱいあるねぇ」
俺は無難に長剣を選ぶ事にしたが、ジュンはかなり迷っている。
「長考だな。そんなに悩むものか?」
「だって、さっきの説明を聞く限りレベルアップしたらステータスを自分で振り分けるシステムじゃないでしょ?良し・・・ボクは魔法使い系になりたいから杖にしよう!」
へぇ~そういうもんなんだ。
俺はゲームをしないからな。昔、純太となんとかマルオとかいうゲームをやったが最初のステージもクリアできなかった思い出がある。
だから、その時はひたすら純太のプレイを応援したり敵の出現パターンを覚えてサポートしたりしてたな。
うん、あの頃も純太は1ステージクリアする度に無邪気にはしゃいで可愛かった。
『武器が決まったら、あとはシンプルに近づいて攻撃して下さい!』
「よぉ~し、やるぞ!」
ジュンは杖を手にスライムに近づいていく・・・が、スライムはジュンに向かって体当たりをかましてきた。
ぽよ~ん と、音がしジュンは転倒した。
「うわぁ!?結構、強いぞ!?」
転倒した際、また黒いパンツがチラっと見えたが・・・まぁ、知らないフリをしておこう。
『モンスターから攻撃を受けすぎるとネクロスは死んでしまいますから、気をつけて下さい!』
ネクロス?この世界ではプレーヤーをネクロスと呼ぶのか?
確か、ネクロスって死人みたいな意味だったような。
そういえば、UNDERWORLDって死後の世界って意味もあったよな?
良く見ると、転倒した拍子にできた擦り傷から血が滲んでいる。
「ジュン、気をつけろ!こっちは殺す気なくても、敵はやる気だ!体当たりを回避すれば、隙だらけだ!そこを狙え!」
「OK、ワルタ!」
ジュンはスライムの攻撃をヒラリとかわし、杖で殴りつける!
ぽよ~ん、と音がしてスライムの頭に十字の絆創膏みたいなモノが現れた。
これは、ダメージを与えたエフェクトか?
殴られたスライムは、泣きながら何かを落として森に逃げ帰って行った。
『ジュンちゃん、お見事!レベルが上がりましたよ!』
ジュンの身体が光り出し、傷も回復していく。
「やったー!レベル上がると回復する仕様なんだ?」
『そうです!立ち止まって休憩しても傷は自然と回復しますが、大ダメージを受けたらアイテムを使うのがオススメですよ!ちなみに、受けるダメージによっては腕や脚等が欠損し動きが遅くなったり武器が使えなくなる場合もあります。場合によっては動けなくなる事もありますから、ダメージを受けないように工夫する事が重要ですよ!では、地面をごらん下さい』
ふむ、スライムを倒した事によってアイテムが落ちたようだ。
「えーと、5マニーと薬草?お金と回復アイテムかなぁ?」
『そのとおり!ジュンちゃんは飲み込み早いですね!グッジョブ!』
やけにフレンドリーな表示だな。人と話してるみたいだ。
「ありがとー!ねぇ、チュートリアルの文字さんは名前あるの?」
『私?私は、皆さんの旅をサポートするサーチィと申します!設定で音声案内をオンにしてもらえると、声も聞こえるようにできますよ』
「本当に!?ワルタ、設定オンにしよ!」
え~と、左手の甲のボタンを押して・・・ステータス画面の右下の設定ボタンを・・・これかな?
『どうですか?私の声、聞こえますか?』
おぉ、可愛らしい女の子の声が聞こえてきた!声優も器用しているのか・・・それにしても、凄いパターンが豊富だな。かなり高度なゲームAI技術を用いられているようだ。
「声、めちゃ可愛い!サーチィちゃん、宜しくね!」
『こちらこそ、宜しくお願いします!さて、次はワルタ君の番ですよ!』
よし、倒し方はわかってるし軽く終わらせるか。
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