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ポンコツでした
飛んできたスライムの攻撃をかわし・・・ぐは!?
『アンスロは死ぬ事はありませんが、負けるとログインした場所に戻され、しばらく動けなくなり、おまけにマニーが半分になりますよ!この場合はスタート地点の森まで戻されますから、頑張って下さい!』
アンスロ?俺の事か?ジュンはネクロスで俺はアンスロ・・・男女の違いか?
「ちょっと、ワルタ!?なんで自らスライムに飛び込んでいくのさ!」
「なんか、上手くいかないな・・・ぐは!?」
ヤバい、このままだとスライムに負ける!?体力とかは表示されてないが、何となくあと3回くらいダメージを受けるとヤられるのはわかる!
なんだか、スライムの表情が・・・心配そうに俺を見ている?
ぽよ~ん と、スライムがかなりゆっくり攻撃してきた!手加減してるのか?
しかし、それすらかわせず俺はまたしても攻撃を受けてひっくり返った。
「わ、ワルタぁ!?」
ジュンと違って、身体に傷はできないが・・・これはヤバい!
『ワルタ君!長剣はリーチもありますから、前に突き出したまま待っていればスライムにカウンターを取れますよ!』
サーチィさんの助言を聞き、俺は長剣をスライムに向けて突き出す。
すると、スライムは・・・ため息を吐いた後、自ら剣に刺さって、森に逃げ帰って行った。
ふぅ、危うく森からやり直すところだった。
「・・・何でもできるスーパーマンだけど、そういえばゲームだけはヘタクソだったよね」
なんだか、ジュンの視線が痛い・・・今のがカッコ悪かったのは自覚してるから、そんな目で俺を見るな!
『えっと・・・ワルタ君、設定の初心者アシストをオンにしてくれれば私がアドバイスしますので、暫くはそうして見ませんか?』
「は、はい・・・サーチィさん、宜しくお願いします」
俺は素直にサーチィさんの申し出を受け入れ、アシストをオンにする。
レベルが上がり、アイテムもゲットした。うむ、なんか身体が丈夫になった気がする。
それにしても、ダメージの演出や俺とジュンのやられた時の違いが気になるな。
「あの、サーチィさん。ネクロスとかアンスロって何ですか?」
『う~ん。あまり、情報をペラペラ喋りたく無いんですが・・・あなたたちは記念すべき一般プレーヤー1番と2番ですし、少し甘やかしちゃいますか!ネクロスは人間の世界で死んじゃって、こっちに来たプレーヤーです。アンスロは生きてる人間で、一般的なプレーヤーですよ』
「やっぱり、このゲームは死者のデータまで再現してるんですか!?」
驚きの声をあげる俺に対して、サーチィさんは淡々と話を続ける。
『このゲームは、そういうゲームなんですよ。天に召される罪も汚れも無い魂だけが、ネクロスとしてゲーム内で蘇生されます。ネクロスに関しては、それを望む人だけがゲームをプレイできるようになってます』
「確かに、ボク・・・泣きながらお願いしたよ。死にたくないって、もっと・・・渉と一緒にいたいって。そしたら、いつの間にかスマホの画面にゲームの案内が映ってた」
「純太・・・」
『純太?あ、ジュンちゃんは男の子だったんですね!?性別は変更できないけど、大丈夫かな?』
「はい、望んで女の子になったんで・・・」
ジュンは、チラリと俺の方を見た。
そうか、そういう事か!
ジュンの気持ちは察したが、肝心の俺がジュンにときめいていない・・・ある意味、俺の純太好きは重症のようだ。
普通に見たら、めちゃくちゃ可愛いのに・・・努力しよう。
『あら、同性愛のカップルだったんですね?』
「「いや、そうじゃないんです!」」
ジュンと俺の声がバッチリ、ハモってしまった。
『もう、照れちゃって!2人とも可愛いですねぇ~それにしても、ワルタさんのポンコツぶりはヤバいですね。いいですか、ネクロスのジュンちゃんは、この世界で蘇生されましたが次はありません。ワルタさんは、なにがなんでもジュンちゃんが二度と死なないよに守ってあげなくちゃいけませんからね?』
ポンコツ・・・生まれて初めて言われたワードだ。なかなか、胸が痛い。
『ジュンちゃん、このゲームはクソゲーじゃないので蘇生されたネクロスはチート使って無双とか無いですから、レベル上げも慎重に行いましょう』
「ボクも初心者アシストオンにしました。サーチィちゃん、あらためて宜しくね!」
『はい、こちらこそ宜しくお願いしますね!とりあえずレベルにあったダンジョンやクエストを案内しますから。あ、それと・・・2人でイチャイチャしたい時はオフにして下さいね』
「「し、しませんから!」」
またもやハモってしまった・・・息が合うのは、どっちの世界でも分からないようだ。
『モンスターもそうですが、これからアンスロの一般プレーヤーはどんどん増えていきます。悪人には通知を送ってませんが、ゲームの世界だと開放的になって悪い事をする人も現れるかも知れません、フレンド作りも慎重に!』
サーチィさんは、とても親切で面倒見が良いな。
あれ、なんか・・・また涙が出てきた。
「え?ワルタ、なんで泣いてるの!?」
『あ、もしかしてポンコツって言ったの傷つきました!?』
「いや、違うんです!多分、サーチィさんが親切で面倒見良いから・・・死んだ母を少し思い出したのかな。すいません、勝手に重ねてしまって」
ジュンとサーチィさんが、黙ってしまった・・・つまらない事を言ってしまったな。
「す、すいません・・・つまらない事を言って」
『いいえ、少し嬉しい気がしました。私も、こういう形で人とふれ合うのは初めてですから。あ、良かったらママって呼びますか?』
「いや、それはちょっと・・・」
ジュンは少し寂しそうな顔で呟いた。
「母さん、父さん・・・ボクに会えなくなって悲しんでるかな?」
「・・・こっちの世界に招待できないのかな?」
『一般の大人には、今のところ案内してないんですよ。どうしても、子供より汚れがあるので・・・将来的にはできるように頑張りますから』
「ありがとう。サーチィちゃん!ふふ、本当に渉のママに似てるねぇ~神様みたいに優しいもん」
『・・・神様は優しくなんて、ないですよ』
さっきまで明るかったサーチィさんの声が、少しだけ暗くなった気がした。
『さて、町へ入りましょう!冒険はこれからですよ!』
「「はい!」」
俺たちは、またもやハモって返事をし町へと入って行った。
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