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ギアスーツ
ペリドットは日課の見回りだとラピスとアタシを連れて地上に出る。
「いいか新人。ここはIAが住まう町だから俺達もAIのふりをしていなければならない。そこんところわかってるよな?」
そんな無茶なと口に出して言おうか迷ったが黙って頷く。
喧嘩っ早い手合いは黙っていうことを聞いていれば機嫌が良くなって扱いやすくなる。
これは親父の受け売りだ。
ゴソゴソとゴムでできた全身タイツタイプのスーツを取り出す。
「これはギアスーツという。
こうやって引っ張って着るんだ。」
グニグニと無理やり引っ張って着替えるペリドット。
「ウゲェ、これ着るの嫌なんだけど。」
「文句を言うなラピス。
これも密偵の基本だ。
大衆に紛れて情報収集するのも仕事の一つだ。」
アタシも嫌々だが足を入れて無理やり引っ張る。
かなりピチピチで着心地はあまり良くない。
「ねぇ、とても女の子に着せる服とは思わないわよね。」
そっとラピスが耳打ちする。
「…文句言っても変わらないんでしょ?
なら我慢するしかないじゃない。」
半ば諦め半分で着替えを済ませる。
「よし、着替え終わったな。
それじゃあ行くぞ。
あ、地上に出たら一切喋るなよ。
情報を伝えるなら腕についてるコマンドシートで伝えろよ。」
「はーい。」
「…はい。」
説明を受け、渋々、ペリドットの後に続くラピスとアタシ。
間
地上に出ると広大な荒地の上に壊れかけの都市が築かれていた。
道路も舗装されおらず、雑草も伸び放題。
オマケに空気が悪いときた。
(心なしか息苦しいなここ。)
スーツのせいか環境のせいかわからないが呼吸がしづらい。
『止まれ。』
チャットウィンドウが開き、ペリドットから指示が出る。
アタシ達が止まると前方に長方形の白っぽいAIが走ってくる。
『あれは何?』
『あんなのも知らないの?
警備ロボよ。』
呆れたような物言いのラピスが警備ロボを睨む。
『お前ら、俺が対処するから一切反応するなよ。』
そう言って片手で制する。
『蟷ク遖上↑繧句クよー代h縲
莉頑律繧ょ?豌励↓蜉エ蜒阪@縺セ縺励g縺??
ID繧堤「コ隱阪@縺セ縺吶?』
警備ロボがペリドットの目の前で静止する。
謎の言語を発するとペリドットの代わりに彼の相棒であるヘッドギアが喋り出す。
『縺サ繧峨h縲ゆク我ココ蛻??ID縺?縲
縺雁燕繧峨b螟ァ螟峨□縺ェ縲』
『縺ゅj縺後→縺??∝ケク遖上↑繧句クよー代h』
ペリドットが何かを差し出すとそれをスキャンし、警備ロボは去っていく。
その様子を見送ってアタシ達は彼の後をついていく。
『ねーペリドット、今日の目標は?』
飽きたのか疲れたのかラピスが怠そうに聞いてくる。
『今日は資源物資の回収と近々行うクーデター予定地の視察だ。
くれぐれも余分な戦闘は避けるようにガーネットのカシラのお達だ。』
『あんた我慢出来るの?
戦闘狂の癖して資源回収や視察に志願するような脳があるとはね。』
小馬鹿にしたように彼女が言う。
『なんだと?!
俺ァ、カシラに一端の恩があるからこそなんだってやるぜ。』
『あら、その割には暴れて計画が頓挫していることの方が多い気がするんだけど気のせいかしら。』
嫌味の応酬に二人とも睨みを効かす。
何故、ガーネットは何故ここまで気が合わない二人を人選したんだろう。
首を傾げるばかりだ。
『あのーこんなところで油売ってても先に進まなきゃ何もならないから喧嘩はその後でいい?』
気にせず割って入ると二人はフン!と首を背けズンズンと前進する。
(案外、単純なのかもしれない。)
似たもの同士だと言うことに気が付き、苦笑いをこぼすのであった。
間
市中を走り回るノイマン。
AIの市民は迷惑そうに彼を見つめる。
それもそうだ。
神なる人間のコピーとされるクローン人間がぼろ布をまとい、子供のように走っているのだ。
「ヒャッハー、久々の外だー!
うわーい!わーい!
相変わらず何も変わらないし何も進歩もシンギュラリティもない街だなぁ。」
小馬鹿にするように辺りを見回す。
『縺ゅ?縲∵恪繧堤捩縺ヲ縺上□縺輔>縲
逾槭↑繧倶ココ繧』
一体のAIが困ったようにノイマンに話しかける。
だが、彼は聞く耳を持たない。
「服を着ろ?
そもそも服って君たちも服のような装甲があるだけで着てないじゃないか。
だったら君たちも布製の服を着るべきだ。
他人に指摘するならまず自分の言動を見直せと言う先人達はいい言葉を残したよなぁ。」
しみじみとノイマンは頷く。
『縺ァ縲√〒縺吶′縺昴?縲∫岼縺ョ繧?j蝣エ縺ォ蝗ー繧九?縺ァ縺吶?』
「え?目のやり場に困るって?
でもさぁ、人間って元々、毛皮とか体毛もないし急所になってるところは体毛で隠れてるわけだし別にいいじゃん。
服なんてペラペラの布でそんな倫理でしか物事を考えられない方がどうかと思うよ。
むしろこの肉体を見て欲しいくらいだよ、ホラ!」
シーツを剥ぎ取り、肉体を見せびらかすノイマン。
辺りのAIは騒然となり、メインカメラを背ける。
その様子をヘレン達が見ていた。
これが数奇な運命に繋がるとはまだ彼も彼らも知らない。
【Next to gear?】
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