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そもそも、パーティードレスというのは何種類かのタイプがある。
大別すると、八種類。フィット&フレアー、バルーン、Aライン、Iライン、Xライン、エンパイア、タイト、フィッシュテールといった具合だ。詳しい説明は省略するが、基本パーティドレスを初めて着るという初心者のお客様には、フィット&フレアータイプのドレスなどをお勧めするのがいいとされている。というのも、パーティドレスとして極めて一般的な型である上、トップスのフィット具合をスピンドルひもで自分好みに調節できるため、体型に合わせた着こなしが可能であるからである。上半身は体にフィットしていて、スカートは裾広がりでふんわりなっているのが特徴のドレスであり、私も友人の結婚式にはこのタイプのドレスを着て行った覚えがある。
そんな中、件のドレスはいわゆる“タイト”と呼ばれる種類のものだった。
この種類のドレスは、私から言われるとだいぶ“上級者向け”に分類される。全体的に細身なので、ある程度体格が華奢、かつあまり胸やお尻が大きくない人しか着ることができないデザインだからだ(正確には、着られなくもないがどうしてもドレス全体が浮き上がってしまい、体のバランスが悪く見えてしまうという難点があるのである)。
また、他のドレスのタイプよりもメリハリがつかないため、人によってはIラインタイプ同様に“すとーん”とした寸胴に見えてしまう心配もあるだろう。
もっと言えば、結婚式のような場においてもあまり歓迎されないことが多いタイプのドレスでもある。体にぴたっとフィットしすぎていると、ラインを強調しすぎて少々下品に見られてしまうこともあるからだ。勿論、デザインと着こなす人によっては、普通に美しく華やかに見えることも少なくないのだが。
「……色も真っ赤、なんですよねえ」
私はまじまじと該当のドレスを見て言った。
「しかも、上着は黒。タイトもので、この色で、人気ってどーゆー?」
結婚式でパーティドレスを着る場合、新郎新婦より目立たないものを、というのが暗黙の了解としてある。が、このドレスはどう見ても結婚式向きとは思えない。真っ赤な色もさながら、あちこちに星屑のような白い真珠型のビーズが入っており、なかなかけばけばしく見えるからだ。
はっきり言って、あまり趣味がいいものだとも思えない。自分の店の商品に対してこんなことを言ってしまうのも何だが。
「私も不思議なのよ」
店長はうんうんと頷いて言った。
「でも、最初にオーダーメイドでこれを作ってくださいって言ったその人はね。本当に、自分でこのデザインを考えて、ドレス屋さんに持ち込んだって話なのよ」
「ええ……?」
「派手好きの人だったのかしらねえ。で、最初に頼んだ人も、そのドレスを着て結婚式場で亡くなったの。毒物を飲んでね。……で、高いお金かけて作ったドレスだし、安値でいいから買い取ってくれって言われてうちのところに来たんだけど」
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