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「なんか、オバケ、って断定できるようなものでもないみたいなんだけど。その女の子の話じゃ、なんだかぴらぴらした、っていうか、ひろひろした、っていうか、白い、布だか紙だかカーテンだか、そんなようなもの、だって」
「そんなような、って?」
「うん、何にもないところにね、道の端だか野球場の真ん中だか、その辺ちょっと正確に伝わってきてないんだけど、とにかくそういうところに、支えもないのにひらひら~、ぴろぴろ~、と」
「なびいてたらしいのよ」
随分他愛もない話だ。何もなかったと言うが実際には木かなにかにどこかから風で飛んできた布切れが引っかかっていただけではないのか。
これ、素直に言っていいのかな。師堂玲美は考えて、当たり障りのない返事にとどめることにする。
「へえ。なんだろうね」
「そう、そう思うでしょ。ふたりも、何だろうね、って話したんだって」
「そしたら、突然『あっ』って。男子の方が」
「女の子は、どうしたの、何かわかったの、って聞いたんだけど、『何でもない』って」
「それでね。黙っちゃって、彼。『うん』とか『ああ』ばっかり。それしか言わなくなって」
「ちょっと喧嘩みたいになって、っていうか彼はずっとその調子だったから、女の子が一方的に怒って、さよならしたらしいんだけど」
「次の日から休んでるの」
「休んで、って……その男子?」
「そうなのよ。一応家にはいるらしいんだけどね。部屋から出てこないんだって」
「女の子も行ったって。喧嘩別れしたから。気になって」
「でもほとんど反応無いんだって。相変わらず簡単な返事しかしなくて、『何でもない』って言ってて」
「だからオバケじゃないかって。そのぴらぴら」
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