無題

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僕は咄嗟に「インチキだ。」と叫んだ。 しかし、ポストは傾いたままであった。 そしてこう反駁するのだ。 「私は遂に倒れてしまう。」 「だから中身は焚書だ。焚書。」 それはいやらしく聞こえた。 また悲しくも聞こえた。 僕の叫び声よりも。 彼のその、か細い諦観の声は。 僕は言う。 「こんなにも終わりは冷たいんだね。」 「そして静かだ。」 ポストが言う。 「人間と一緒だよ。」 「この世界にあるものは      みんなおんなじなんだ。」 ポストは深く溜息をして、 その後静かに眠っていった。 その眠りは本当に深かった。
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