3人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り道
部活が終わった帰り道。少しだけ空は薄暗くなっていた。
唐突にスマホの着信音。
『次はいつ来るの?』タモツからのメッセージ。あれから、結構な頻度で女の子らしいスタンプを添えてLINEメッセージが送られてきていた。それは、週に二度ほど通院する日程を確認するものであった。
「なに、彼女から?」同級生の野球部員が覗き込んでくる。
「ち、違う……、見るなよ!」画面を隠す。
「いいよな、エースはモテて!あっ、もう違うか」さっき俺の悪口を言っていた三人組が吹き出す。正直、こんなに悪意を持たれいたなんて気がつかなかった。
「お前らいい加減にしろよ」キャプテンが三人を嗜めてくれる。しかし、それで俺の気が晴れる訳はなかった。
「俺、用事があるんで先に帰ります」そう言い残し、俺は駆け足でその場から逃げ出した。
(畜生……)自然と涙が出てくる。公園の中に飛び込むと、ベンチに腰掛けた。
また、スマホが鳴る。
『予定決まったら教えてね』そのメッセージを見て、なんだか少しだけホッとする。
『明日の昼過ぎに行く予定』素っ気ないメッセージを送る。すぐに既読の表示。
『じゃあ、二時に屋上においでよ』
『了解』また、ワザと素っ気ないメッセージを送る。
『楽しみにしてるね❤』
「何を?」一人でメッセージに突っ込む。自然と笑っている自分に気がつく。今の俺には、タモツに会える事が唯一の安らぎになっていた。
空には少しだけ星が見えていた。その星を見ながら明日が来るのが楽しみになった。
「ただいま」家の扉を開けると親父の靴が見えた。少しだけ弾んでいた気持ちが、少しだけ減なりとした。
「お帰りなさい」母が出迎えてくれる。「ご飯の用意できてるわよ。手を洗ってきなさい」ニコリと微笑んだ。
「うん……、先にシャワー浴びるよ」部屋に鞄を置いてから、シャワーを浴びて汚れを落とした。
「なんだ、まだ意味も無く野球部に行っているのか」シャワーを終えてリビングに行くと、親父の攻撃が始まった。
「ちょっと!お父さんは本当にしつこいわね」母が少し怒りながら父を見た。彼は顔を身を隠すようにソファーに移動していった。
「いいよ、母さん……」いつもの指定席に座ると、用意された夕食を食べる。
「野球部はどう?」母は少し心配そうに聞いてくる。
「ああ、大丈夫だよ。みんな良くしてくれるし……」母に心配を掛けるわけにはいかない。
「そう、良かったわ」母は安堵の言葉を口にした。
最初のコメントを投稿しよう!