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花園
「友達結構いるじゃんか……」反対のホームに見えるタモツ。数人の生徒に囲まれて楽しそうだ。中には男子の姿も見える。確か、初めて会ったときに友達が少ないって聞いた筈なのに、俺との尺度の違いなのかと思ったりした。
「なに、花園を眺めてるんだ」振り返るとキャプテンがいた。その口元は少しニヤリとしている。
「いや、別に俺は……」明確な否定は出来ない。
「お前、野球一筋だったろ。これを機会に彼女でも作ってみたら」なんの機会かと言い返したくなったが止めた。
「女なんて……、いいですよ」
「そんなこと言うなよ。ほれ、あのショートカットで、リュックを背負った女子。俺はあの娘がお気に入りなんだよな」それはタモツであった。
「そ、そうですか……。普通じゃないですか」なんだか軽く嫉妬心が芽生える。
「いやいや、いいよ!いい!色白美人で、スタイルもそこそこ……、でも彼氏いるんだろうな……」
「えっ、そんな!?」思わず口にしてしまう。
「どうした?」不思議そうな顔をして俺の顔を見る。
「いいえ……、別に」視線を逸らして誤魔化す。
「あんな娘は難しいだろうけど、気晴らしに彼女作るのも良いと思うぞ。良かったら俺の可愛い妹を紹介してもいいぞ」俺の肩を軽く叩く。たしか、あだ名はジャイ子だった。
「ご遠慮しておきます」俺は深いため息をついた。
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