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夏休み、始まる!
あの花合戦から、三年二か月と数週間がたった。
私たちもネシュレ学園に通う四年生となった。
まあ私まだ六歳ですけれども。
今日はとても嬉しい日だ。
学園のみんなの表情がいつもよりいきいきしていて喜びに満ちており、かく言う私ももちろん例外ではない。
心なしか先生でさえ表情が明るい。
そう、何故ならば。
今日は七月二十四日。
カイリュウの誕生日!
…ではあるが、他に理由はある。
もう一つのことが楽しみすぎて、みんなもそんなことは忘れているし、当の本人でさえ忘れている。
まあ、104回目じゃそうなるか。
それはおいといて。
今日がなんの日か、特に学生諸君はわかるだろう?
夏休みの始まりだよ!
「…これで、ネシュレ学園第145回終業式を終わります。解散!」
学園中にまるで福音かのような温かみさえもって響き渡った放送。
余韻が消えきるより前に、私たちは、生徒は、
わぁああぁあ!!
と歓声を上げたのであった。
「じゃあ気が向いたら遊びに行くっす」
「うん、バイバイ」
私はみんなに手を振ってわかれた。
転移門の設置は終わったので、みんなはちょくちょく遊びに来てくれるそう。
楽しみだなぁ。
キッドとルードスさんは「毎日修行に行く」と言っていたので、
「じゃあ泊まってったら?毎日不死竜たちが他の希望者たちに修行つけてるから、そこに混ぜてもらえばいいんじゃない?」
と提案したところ、うなずいてくれた。
私はその修行に参加したり、竜たちとギルドに行ったりするつもりだ。
そうそう、ある程度強い個体には、夏休み限定、ケイトとリヒトによる実戦訓練もあるらしい。
領の状況は、長老からキミラを通して手紙を受け取っている。
宿ができ、町は広がり、服が広まり、警備隊も強くなった。
カメ吉たちも帰ってきた。
私が前世で記憶しているレシピを手紙で思いつくまま送っていたので、アリエの食堂のレパートリーも増え、サクマ・ティオ・リヴィ・ロディオの異世界人たちが喜んでいる。
リヴィ・ロディオはカフェ日の丸に作った転移門からかなり頻繁に遊びに来る。
鋼竜のギンソウのおかげでティオの武器づくりがガンガン進んでおり、実はミルバやガイアル領にも売っている。手間をかけていて高品質のため少々値は張るが、それでも大好評なのだとか。
サクマは町づくりで建設ラッシュのここ最近で、強力な助っ人。
設計図があるのとないのとではかなり負担が違うらしい。
元人間の吸血鬼ってのもおしゃべりな料理人と鍛冶職人のおかげでバレたらしいけど、特に住民の反応に変化はなくて驚いていたらしい。
貨幣の流通もばっちりで、今は特定の分野においてはほぼミョウンさんの定期市に意味がないほど領内の生産が安定し、かつ出回っている。
今では、活気や人口こそミルバに劣るものの、文明レベルや機能的にはミルバよりちょっと下、といったところだという。それも、まわりの領や町への交通網を調えれば追いつけそうなのだとか。
まあ、町の公共設備に関しては学園にいながら口出してたからな。
日本にあった設備、たとえば公共の水道や首都の地図の設置、道路の整備なんかを参考にしているので、周辺地域と比べてもかなりレベルが高いんでなかろうか。
しかしミルバに追いつくとか、どうなってんだよ。
これが三年二か月の力か。
そうそう、回復玉も今やアートイス王国のかなり広い範囲で出回り、隣国であるサパーヌ王国から売ってくれと言われているらしい。
もちろん領内にも出回っている。
ただ今は流通は領主やギルドなど比較的公的な機関が多いから、今後は民間にも流通ルートを開拓していきたい。
あと、回復玉の生産元である私たちの周知度はまだ低いらしく、アートイス王国の西の方の領の品、という認識も変えねばなるまい。
そして、最近では、海路を結んだガイアル領からの客も増えてきているらしい。
観光目的や、ヤクルの森にギルドの依頼で魔物討伐や薬草の採取のためやってきた冒険者など。
中央警備所で売っている回復玉やティオの武器、そしてアリエの食堂や食べ物の店がものすごく人気なんだそう。
また、ウサマルたちの産業発展計画も着々と進んでいる。
試作米や新しい作物もできているらしいので、私が帰ったらチェックせねば!
いや、マジで発展早すぎね?
うーん、まあ悪いことじゃないし、いいか!
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