そのときのために

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 家事は妻に任せきりだったことを今さらながらに反省していた。でも、反省しているだけではどうしようもないのだ。子はあるが一人娘で、九州に嫁いでいるのだから、その子の手を借りることも難しいのだ。だから、自分が何とかしないといけない……。  完治する病気であったなら、もしかするとこんな気持ちにはなっていなかったのかもしれない……。本当に自分は、これまでずいぶんと妻におんぶに抱っこだったんだなと呆れた。  妻が病院に運ばれてから1週間がたった今、洗濯と掃除、それからゴミ出しは何とかできるようになったが、食事に関してはご飯を炊くことができるようになった程度で、外食をしないときでも惣菜に頼ってばかりだった。  ときにはヘルパーの手を借りるにしたって、こんなことでは、とても妻を迎え入れることなどできやしない……。  しばらくは時短勤務にしてもらう予定ではあったが、仕事と介護の両立を考えると気が重かった。  食べごろを迎えているのに、どうやって調理したらいいのかわからず、完全に出番を失ってしまった豆苗を前に、私はため息をつくことしかできなかった……。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加