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オーディション
「うわあああ」
「おいおい、そんな泣くこたないだろ?」
俺は娘を必死で宥める。しかし娘は一向に泣き止む気配はない。
「だって、あって……!!」
娘は咽び泣いた。俺は背中をさすってやった。
「まだいるからな?そう泣くなって。まだ次は分からんさ」
「でも!落ぢぢゃうかもじれないじゃん!」
娘は濁点混じりの言葉で俺に訴える。正直辛い。俺だって娘をこんなに泣かした──を消してやりたいくらいだ。しかし娘はそれだけはやめて、と希望がわずかに残っているんだ、まだ消さないでくれ。と目で訴えかけているので消すに消せない。
「もう、お父さんなんか知らない!あっち行ってて!」
「あ、ああ。分かった。今あっちに行くからさ。そっとしといてやるから」
「早く行って!」
「分かった分かった」
俺は降参したように両手を上に挙げたが効果はなかった。というか見向きもされなかった。妻もちょっと引いてるし。娘に俺は引いてますけどね。
どうしてこうなったかだって?過去に戻れば分かるよ。
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