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結局、放心状態のまま、3人でデパートを出た。
「ふあぁ~つっかれた~ゲーセンってうるさい。」
反対側にはげっそりとしたカナタが無言で歩いている。
結局、人酔いしてしまったトア達一行は、近くのカフェで休憩してから帰ることにした。
カフェラテを注文し席で待っていると、目の前の小川を挟んで反対側にさっき果物売り場で出会った女の子が歩いていくのが見えた。
「あっ、あの子…!」
トアが思わず呟くとふたりもつられて振り返った。
「様子変」
「えー、そーかな?」
二人が口々に呟くのを遠くに感じながらトアは席を立って、女の子を追いかけた。
確かに足元が少しふらふらしているように見えて、時折周囲を気にするように見回している。
何かあったのかもしれない。
歩道に出て、橋を渡って先回りすることにした。
女の子は気づかずにまっすぐ進んでいる。
「あれ…?」
しかし橋を渡り終わるとそこにいたはずの彼女の姿が見当たらなかった。
不思議に思いつつ、トアはがっくりと肩を落としカフェへと戻った。
「さっきの子…大丈夫でしょうか…。」
「大丈夫じゃない?元気そうに歩いてたし!」
ただ、彼女ともう一度話がしたかった。
あの何かを訴えるような綺麗な瞳が頭から離れない。
確かに彼女は何かを言いたそうだった。
「疲れた…。」
「何にも起こらなくてよかったです…。」
「ほらね!?やっぱり僕がついてたからだよ!」
そんな他愛もない会話をしていたそのとき、なんの前触れもなく、トアの体に異変が起こった。
全身が、何かに取り押さえられたように重たくなり、強張ったのだ。
「(・・・・!)」
カナトに知らせたくても、声すらでない。
楽しそうに話し込んでいる双子はトアに気づいてない。
(たすけて)
何度も心で叫ぶ。
「・・・トア!?どうしたの!?」
数秒遅れてカナトが振り返った。
そして顔色を変えて肩に手を置いた。
「…はぁ。もう大丈夫ですよ。」
カナトは座ったままいつになく優しく、まるで兄弟がそうしてくれるように、トアを抱きしめた。
その瞬間、足の力がぬけ、トアの体にかかっていた金縛りは消えた。
「・・・!い、今の!」
慌てて体を離す。まわりのお客さんが怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「後で説明します」
カナトが目でカナタに意思を伝えると、
「とりあえず、ここ出るぞ」
頷いたカナタがトアの手を掴んで足早に歩きだした。
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