第20話 襲撃

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「…ミラ!お前!」 リオの言葉に、全員に一瞬にして緊張が走る。 「リオー!会いたかったわ!」 全員の視線は素早く声の主を捉えた。 目の覚めるような金髪の強めのウェーブがかった長髪に、爛々と光る赤い瞳。 そこには童話から飛び出てきたかのような美しい女性が佇んでいた。 しかし獰猛な獣のようなその瞳は、何かを探すように部屋全体を舐めるように見渡している。 かと思えば、リオを見つけ飛び上がると、一瞬にして隣に降り立った。 間髪を容れずに、リオの腕に自身の腕を蔦のように絡ませる。 「いつぶりかしら?寂しかった?」 「ミラ、やめろ…ベタベタ触るな」 「もー!照れなくってもいいのよ?」 リオは手を振り払う。 「……。」 それを見ていたカナトが無言のままミラと呼ばれた女性に背を向けて部屋を出ようとした。 (僕、先にトアのとこ行ってるね。人間がいるって気づかれないうちに上手ーく追い払ってよね?) 落ち着いたカナトの声が4人の脳に響いた。 「カナトちゃん、どこ行くのっ?」 ミラの声がカナトを追う。 「…べつにー。あんたに答えるつもりないし」 カナトが軽くあしらって扉を閉めようとしたその瞬間。 「…ねぇ、もしかして、あの子のとこ?」 ミラの声が妙に自信を持って、響いた。 「……!」 カナトが振り返る。 「…人間、いるよね?」 ミラが不敵な笑みを浮かべ、舌が犬歯をなぞった。 瞬間、カナタが、遥希が、遠夜が椅子から立ち上がって、身構えた。 「やだー。そんなに怒んなくっても大丈夫よ。まだ食べないわよー」 「貴様!」 カナタは今にも飛び掛かりそうだ。 「でも、気になるのよねぇ、挨拶くらいしなくちゃ?」 スゥ…と息を吸い込み、うっとりとした表情のミラは続ける。 「いい香り…あなたたちよく我慢できるわね」 「帰れよ…。トアはお前には関係ない。それにもう俺達は!」 リオが、嫌な記憶を振り払うように叫んだ。 「ひどーい!リオったら冷たいのね!そんなにまでして隠そうとするなんて、よっぽど大事なのかしら?」 −あたし、妬いちゃうかも…。 にっこりとわざとらしく微笑むミラの目は、狂暴で血に飢えたバンパイアのそれだった。 「トアに手を出したら、許さない」 カナタが唸るように言う。 「わかってるわよっ、お友達になるだーけ」 「それも…ミラ、抑えが効かないときもありますし…ね、トアさんには、近づかない方が」 遠夜が口を開くのを待っていたかのようにミラの視線が素早く移動した。
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