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二人で洞窟を出ると、高く日が昇り午後の日差しへと変わっていた。
「わざわざありがとう…本当に落ちたときはどうしようかと思ったよ…」
ううん!と首を横に振ると、少女は手を引いて道を教えるように歩き続けた。
急な坂を回り込むように上る道があり、そこを二人で息を切らしながら登った。
登り切ってしまえば、枢木家はそう遠くないところに見えた。
「こんな近くにこんな場所があったんだ…」
半分独り言ののように呟くと、彼女は首を傾げた。
おそらくトアがこの近くに住んでいるとは思ってもいないようだ。
「もうすぐ家だよ…!といっても居候先なんだけどね…せっかくだから紹介させてほしいな…大丈夫!みんな絶対に怖がったりしないから!むしろ喜んでくれるんじゃないかな?」
苦笑いしながら庭を横切り、彼女を連れて玄関までやってきた。少し不安そうにあたりを見回す彼女は、小さく首を横に振った。
きっと知らない人に会うのが不安なんだろう。
鍵がかかっていた為、家の呼び鈴を鳴らす。
古めかしい音があたりに響いた。
「あ!トア帰ってきたよ!よかった!」
「ほら~ね~。りーちゃん心配しすぎ~!いざとなったら捜索願出して警察動員して後から記憶消せとかなんとかって−」
「バカ!言うな!ぜってー言うなよ!」
「この人ほっといたら軍隊とか出動させるレベルだったよね?」
「それはない!言うな!」
どたどたと屋敷の中で足音がする。
小一時間とはいえ、あの事件のあった直後に姿を消してしまったことが、今更ひどく申し訳なく思えてきた。
「で、でも、無事だし!友達も連れてきたし…しかも、人間じゃないし!」
扉が開けられる数秒間ですら、トアの心は踊った。
「おっかえええええええっ!?トア!?何があったの!?」
扉を勢いよく開けた遥希の笑顔が消し飛んだ。
「え!?なに!?どしたのその格好!?」
その遥希を押しのけてカナトが半笑いでトアをじろじろと眺めている。
「こないだのやつに襲われたのか!?おい、なんとか言え!そいつはどこだ!?」
かと思えばカナタが私の身体を掴み小さく揺さぶった。
「か、かなたくん…襲われてないです…ほんとに…!」
目を白黒させていると、カナタの腕をぱしっと掴む手があった。
「えっ…」
隣に立っていた彼女がものすごく険しい顔でカナタを睨んでいる。
「どしたの、そんな怖い顔してっ…」
「お前は…」
彼女は驚くカナタの腕を振り払うと、トアの手を引いて一歩下がった。
「・・・」
少女はトアを守るように少し前に立ち、遥希たちを警戒したように睨んでいる。
その様子にいち早く気づいたのはカナトだった。
「その子、人魚だね。」
その一言にカナタや遥希、そして駆け付けたリオも身構えた。
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