もう一度

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もう一度

「今流行りの" レンタル眼球"。 あなたも提供してみませんか?」 僕の瞳は昔から赤い。日本でもそれは珍しく、僕は小さい頃からいじめの標的だった。そんなとき、あの男に出会ったのだ。 「今流行りの"レンタル眼球"にあなたも提供してみませんか?もちろんタダでとは言いません。赤い瞳は大変人気が高いので、一時間で千円でどうでしょう!高校生にしては良いバイトでしょう?」 僕は流行りには疎いが、そんなレンタル聞いたことも見たこともない。そもそも、カラーコンタクトがある時代だ。僕はそもそもコンタクトはしないが。 断ろうとしたが、その後の男のセリフが気になった。 「その目がそんなに気に入っているのかい?私にはそう見えませんね。あなたは目の色だけで虐められているというのに」 男は続けた。 「レンタルの時間になればこの目薬をして、寝るだけですので、さあさあこれを」 目薬を手渡された。 核心をつかれドキリとしたが、その通りだ。少々怪しいと思ったが一時間で千円くれるという。しかもバイト中は寝るだけで良いのだ。 僕は目薬とバイト代を受け取り、眼球を提供した。 "睡眠コースは、時間になりますとこの目薬をしてベッドなりで横になると自然と睡眠状態になり、あなたの瞳の色はレンタルされます。 しかし、起床コースと言うのがあり、寝る時間が無いという御方はレンタル中、こちらが用意したこの目薬をしますと、睡眠時間は5分程度で後のレンタル時間は起きていることができます。その場合、あなたの瞳はレンタル中ですので、こちらが用意した瞳になります。 まぁ、起床コースは最近できたばかりでして色々なバグなどの報告がありますが、生活に支障はございません" レンタル時間になり、僕はあの男の言葉を浮かべて準備をはじめた。僕は起床コースにした。面白そうだったからだ。 目薬をして、横になった。 約5分後、僕は目覚めて鏡を見に行った。 鏡には僕の瞳が白銀色に輝いていた。 瞳の色だけが変わっており、それ以外は普段の僕だった。 正直なところ、この瞳で生活は出来そうにない。 常に幻覚が見え、めまいがしてしかたがない。 幻覚では、白い服を着た人やスーツの人など計3人の人に殴られたりして、体中痛い。3人の顔は、ぼやけてよく見えなかった。 僕は気を失っていた。 時計を見るとレンタルの時間は終わっており、瞳も元の色に戻っていた。 バグなのだろうが、あの幻覚は何だったのか。 もう二度と経験したくない。 「痛っ」 僕は立ち上がろうとすると足に痛みを感じて、見てみると腫れていた。 まさか、と思い幻覚で殴られたであろう場所を確認すると拘束された跡や傷痕などが痛々しく残っていた。 「こんな傷、今まで無かったはず」 今思えば、白銀の瞳で鏡を覗いた時、自分の顔や体だが、何処か助けを求めているような緊迫が張りつめていたような。 だが、今の僕にはどうすることも出来ない。 あの"レンタル眼球"を勧めてきた男を探すにも手がかりは目薬ぐらいだ。 僕はあのレンタル眼球のバイトを続けていた。というよりもあの男が毎日のようにやってきて進めてくるのだ。 だが、相変わらずレンタル中は白銀だし、それを報告してもただのバグだという。 相変わらずニタニタしている男だ。 回数を重ねるごとに白銀の瞳にも慣れてきたある日。 レンタル中、白銀の瞳で買い物に出掛けた。その帰り道、僕は何者かに刺され死んだ。通り魔だった。犯人は逃走し、血を流し倒れた僕の周りに人が集まる。 「救急!誰か!」 「大丈夫が!?」 周りの人はパニックだ。 その中の、冷静な男の声が聞こえた。 「また駄目でしたねー。これで何度目の輪廻転生でしょうか。白銀の瞳の厄に打ち勝つハッピーボーイとはほど遠い。前回は対面まで行けたのですがね…。」 あの男だった。 皆焦って男のことなど誰も見ていない。 騒然の中、男は、地に伏している僕に耳打ちをした。 「あなたは、その瞳の持ち主の身代わりになったのですよ。では、」 僕は静かに息絶えた。 朝日が眩しく降り注ぐ散歩道。ある男が僕に声をかけた。 「やあ、そこの赤目の少年、 今流行りの" レンタル眼球"。 あなたも提供してみませんか?」
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