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「誰だってそんな経験の1つや2つあるもんだろう」
叔父はすっかり冷めきったコーヒーに口をつけながらそう言った。
「ねえ、今の話本当?」
僕がそう尋ねると、叔父はふ、と目を細めた。
「さあな。海斗が本当だと思うなら本当なんだろう。創作だと思うなら創作なんだよ」
それからは、叔父とは1回も会っていない。
両親からは特に何も聞かないから、叔父なりに元気にしているのだと思う。
叔父が教えてくれたその話が、本当にあった出来事なのか、それとも叔父の創作なのかはわからない。
だが、喫茶店を出る際、財布を取り出そうと叔父が開けた鞄の中に、古びた本が1冊あったことだけは今も覚えている。
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