古本屋

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この話は、僕がオカルトに興味を持ち始めたきっかけでもある。   僕の父は3人兄弟で、一番下に年の離れた弟がいた。 僕にとって叔父にあたるその人は、小説家__厳密には小説家志望のフリーターだった。 歳を取ってからの子供だから甘やかしすぎたんだ、とアラサーになっても無職の叔父を、父は恥ずかしい弟だと言っていた。 しかし、幼い頃から引っ込み思案な僕にとって、いつも明るく前向きで、大きな夢に向かってがむしゃらに走るその姿は憧れだった。 共働きで毎日忙しい両親に代わって、時々遊びに来て外に連れ出してくれる叔父は、幼い僕にとっては兄のような存在でもあった。   叔父は行きつけだという小さな喫茶店で、僕に空想の話をしてくれた。 ドラゴンに騎士、魔法使いにお姫さま、天才博士に人間の心を持ったロボット__叔父の話は、いつも僕をわくわくさせた。 僕は、叔父の書く物語がいつか本になることを心から願っていた。
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