4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
***
貧乏学生時代、よく通っていた古本屋があったんだ。
小さな店で古臭くて、店主のじいさんが気さくで気に入ってた。
古い本特有の匂いが心地いい店だった。
就職してからは忙しくてしばらく通ってなかったんだが、ある日じいさんが店を畳むという話を耳にした。
どうやら腰を悪くして、いい機会だからと息子夫婦に同居を提案されたのだという。
いずれ隠居する時が来るとは思っていたが、寂しいものだ、と久々に訪れた俺にじいさんは言った。
どうせ捨てちまうから好きなものを持って行け
そうじいさんが言うので、俺は本棚に目をやった。
最近は活字離れしてしまって、何を読みたいかと言われてもすっと出てこない。
しばらく悩んでいると、ある本が目についた。
最初のコメントを投稿しよう!