理想の自分

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理想の自分

『あなたの願い叶えます。レンタルショップ、ココロ』  俺はそんな貼り紙をスーパーで見た。俺は何者かに惹かれるようにしてその店にやってきてしまった。  外装は新しく看板には子供が書いたような汚い文字で『ココロ』と書かれていた。  中はこじんまりとしていて受付兼レジと思われる場所には寂しくポツンとベルが一つ置いてあるだけだ。そのベルには『いなかったら鳴らしてください』と可愛い丸っこい文字で書かれていた。  俺はベルを鳴らした。アーゴ。音がおかしかった。 上からドタバタと階段を駆け降りる……思いっきり足を(すべ)らして落ちてきた。 「痛たた。あ、お客さんだ。えーっと、どこにしまったかなぁ」  なんだか喜怒哀楽の表情が豊かな女性だなと俺は思った。 「あ、あった、あった。おめでとうございまーす!」  今なんだ。開店一人目のお客さん。クラッカー丸出しだったけど大丈夫かな?この店の今後が心配だ。 「で、何をお望みで?」  しまった。何も考えずに来てしまった。とっさに、 「あ、大金持ちとか」 と答えてしまった。すると女性は、 「あー、当店は身体や性格しかレンタル出来ないんですよ。すみません」  身体や性格?それなら── 「あ、はい。かしこまりました!今は開店キャンペーン中なので一年間無料でレンタル出来ます!」 「ああ、分かったよ。君、ありがとうね……あれ?もうレンタル出来ちゃってるね。凄い力だ」 「またのご来客お待ちしております!」  レンタルだから絶対もう一回来ますよ。と微笑(ほほえ)んだ。 「これは凄い……」  僕は声に出してしまうほどレンタルの力に驚いていた。まさかこんなに理想的になるなんて。高身長、すらっとした脚、キリッとした顔立ち。極め付けに腹筋まで。細マッチョと言う奴だ。完璧だ。僕が夢見ていた姿だ。そして性格まで。この神対応が出来る性格は良い。だが疲れる。家に着くまで二回ほど人助けをしたのだから。  僕は姿だけでなく名前も変え、生活する事にした。
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