2人が本棚に入れています
本棚に追加
一年が経とうとしている時、一本の電話がマネージャーに掛かってきた。
「急用だそうです」
「ああ、分かったよ。すぐに回してくれ」
僕はよく分からない理由で一躍有名人になり、ドラマも多数。大河にも出演した。大金持ちになれた。理想の生活を送り、何不自由ない生活を送れている。
『レンタル期限がもうすぐ切れますよ?』
「ああ、イタズラ電話かな?」
『……やはりお忘れですか』
僕は考える。何の電話だ。
「誰ですか?」
『瑞稀です。階段からわざと落ちて一人目と嘘をついてお祝いしたレンタルショップ屋のココロの瑞稀です』
思い出した。そうだ、僕はレンタルしたんだ。この身体も、性格も。
「ああ、そんなのもありましたね。分かりました、では」
そう言って電話を切ったが行きたくない。分からない。自分本来の姿を。失望したくない。今後が心配になる。生活は?名誉は?地位は?
「レンタルなので返却して貰わないと困りますよ」
僕は店に来た。いつの間にか店は移転していて広くなっていた。繁盛しているようだ。
「それじゃ返却の方を!」
しかし、俺は気が向かなかった。返した後の人生が不安で。……ん?この人こんなに背が高かったっけ?
「ありがとうございました!」
「え?あ、ども……ん?」
俺は店を出て右へ曲がった。レンタルショップ屋のショーウィンドーに自分の姿が映る。そこにはどこかであったような人がいた。
その後の彼の人生は、芸能界を引退し、一会社員として、働いている。
ある日、彼はこの世から消えた。そして一年間の失踪を遂げたのち、再び戻ってきたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!