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相田君が入ってきたのは、俺の2年後。つまり2年後輩なんだ。大学って、中学・高校までと違ってかなり広いし、ましてや俺の行ってる大学なんて総合大学だから、同級生でさえほとんどのやつは顔も知らない。まあ、相田君はイケメン店員ってことで意外と知ってる人はいないんだけど。それに引きかえ、冴えない俺は、大学生利用率ナンバーワンのスーパーに勤務してても、全然覚えられてない。そして、学部もサークルも人種まるっきり違う俺と相田君を繋ぐものは、スーパーのアルバイトしかないんだ。  相田君は俺の学年1つ下。バイトにも俺の1年後に入ってきた。 「相田博樹です。よろしくお願いします。」  その時も確かキラッと歯を光らせてたな。俺、初対面で思わず聞いたんだ。 「ねえ、相田君の歯ってセラミックとか?何でそんなに光ってんの?」  そしたら相田君は怒るどころか大爆笑して、ウケてた。 「ブハッ!!セラミックって(笑)それ、初対面の人に言います?セラミックじゃないっすよ。俺の自慢の歯です。」  俺は、一緒になって笑った。恥ずかしいような照れくさいような気持ちがしていた。相田君の言う通り、初対面の人の歯を作りものだなんて、いかにもデリカシーが無いよな。でも、こうやって笑い飛ばしてくれたことが嬉しかったし、爆笑してる間も、整った歯が眩しかった。  まあ、そんな明るくて屈託の無いキャラだから、あっという間に人気者になってさ。入ってきた時からパートのおばちゃんたちにも可愛がられて、横尾さんなんて相田君のことが推しだってずっと言ってるんだぜ。それで相田君はイヤな顔一つせずにずっとニコニコしてるんだ。良いやつだよな。それから、俺は相田君のことを考える時間が少しずつ増えていったんだ。
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