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すると丁度、お兄さんの口から出て来たのは僕の名前だった。
「オルギンは僕だよ」
ママの後ろから顔を出しながら僕は答えた。僕の存在に気が付いたお兄さんはその場で片膝を着きしゃがみ目線を合わせた。
そしてニッコリと微笑む。
「俺はRの友達だ」
おじさんの名前を聞いたとき僕は思わずママの後ろから飛び出た。
「おじさんの?」
「あぁそうだ」
お兄さんはゆっくり一度頷く。
「実は、彼は忙しくてしばらくあの場所には来られないんだ。その事を伝えるように頼まれてね」
「僕のこと嫌いになっちゃったわけじゃないの?」
「嫌いに? そんな事はない。彼は君と会うのを毎回楽しみにしてるんだ」
「ほんとに!?」
僕の心は一瞬にして晴れた。
だけどそれは快晴ではなく困らせたことに対してのごめんなさいって気持ちが少し雲を散りばめていた。
「あぁ、本当だ。それと今日はRに頼まれて君に手紙を持ってきた」
そう言うとお兄さんはポケットから一通の手紙を出した。
「どうぞ」
真っ白な手紙。丸くて赤いオシャレなモノでとめられていた。
「ありがとう!」
お友達からの手紙。嬉しさで笑みが抑えられなかった。
そして僕の顔を見たお兄さんは少し口角を上げる。
「Rの言っていた通り君はいい笑顔で笑うな」
お兄さんはそう言うと立ち上がった。
「ではこれで」
ママに軽く頭を下げたお兄さんは僕の方に目を向け手を振った。僕も手を振り返す。
そしてお兄さんが背を向け一歩を踏み出そうとした時、僕は忘れ物に気が付いた。
「お兄さん!」
僕の少し慌てた声にお兄さんが疑問を口にしそうな顔で振り返る。
「おじさんにあの時、変な事を言って困らせてごめんなさいって伝えてほしいんだ」
「分かった。伝えとく」
「よろしくお願いします」
僕はしっかりと頭を下げ、お兄さんは背を向けると歩き出し停めてあった車へ。
そして僕は玄関のドアを閉めたママと一緒に早速ソファへと向かい、早速もらった手紙を開けようと裏返す。
するとママが横から手紙に手を伸ばした。
「蝋封なんて珍しいわね」
「ろうふう?」
「そう。昔使われてたんだけど、シーリングワックスっていうのに火をつけてこうやって垂らすの。そしてその上からスタンプを押し当てて封をするのよ」
ママは『こうやって』の所で何かを握った手を傾け、『押し当てる』の所でまた何かを握った手を今度は上から下へ下ろすジェスチャーをした。だけど、正直よく分からない。
「よく分からないわよね」
僕がそんな顔をしていたのかママは心の中を読んだようにそう言った。そして僕はそれに頷く。
「そうよね。それじゃあ開けるから待っててね」
ママは手紙を持って立ち上がり少ししてから戻ってきた。
「はい。どうぞ」
「ありがとう」
手紙を受け取った僕は早速、中に入っている二つ折りにされた紙を取り出す。そこにはこう書かれていた。
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