1.同期の入院

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 一体彼女の身に何が起こったのか。  同期かつよきライバルとして気になった俺は、部長から田所が入院している病院を聞き出し、仕事終わりに行ってみることにした。面会時間は午後8時までと長いので、定時で上がれれば仕事帰りでも寄れる。一応本人に「行ってもいいか」とメッセージを送ると「いいよ」と返事がきた。生きてはいるらしい。さすがに手ぶらだと格好がつかないので、病院の近くにあった花屋でカゴに入ったフラワーアレンジメントを買って持っていくことにした。  都内の総合病院はデカすぎてビビる。正面玄関から入ると、中はさながら高級ホテルのロビーのようで、本当にここに田所が入院しているのかと不安になった。総合受付で場所を聞いてナースステーションでも病室を聞いて、ようやく「田所真由香」のプレートが入った病室を見つけた。4人部屋でドアは開放されていたので室内に入る。入って右奥、窓際のベッドに田所は座っていた。 「あ、杉本だ。本当に来た」  顔を見た瞬間、なぜだかよく分からないけど、安心した。いつもポニーテールにしている髪は下ろしていたし、服もスーツじゃなくて病院の浴衣だったのに、眼鏡と声は確かに田所で思っていたより元気そうだったことにホッとした。 「なんだ。救急車で運ばれて入院してさらには明日手術だって聞いたから、てっきり寝たきりババアになってるのかと思ったのに」 「誰がババアよ。同い年なんだから私がババアなら杉本はジジイじゃない。くたばってなくてごめんねぇ。今月の契約数1位は杉本に譲るけど、復帰したら取り返すからそれまでせいぜい頑張ってよ」  口の回りも健在だ。なんとなく今日1日、何かが物足りないと思っていたが、これでスッキリした。 「ねぇ、それ、お見舞い?」 「あぁ、うん。食べ物にしようかと思ったけど、食べらんなかったらもったいないから、花にした。ほれ」 「ありがと。しばらくは絶食だけど、手術終わって経過良好だったら何食べてもいいって言われてるから、食べ物でもいいよ」 「ん? また来いってこと?」 「ん? 別に来てもいいよ」
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