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ショタコン同級生の落とし方
後悔ってこういうときにするのだなと奴がクラスで声高に力説する様を見て痛感する。
「いいか! この世の中で最も美しい生物は少年! ずばりショタだ!」
昼休みにパンを齧りながら性癖の話になったのだが、私が密かに想いを寄せている安田謙一は白昼堂々とショタコンを宣言する。分かっている。分かっていたよ。あんたが私と並んで歩いても少年が通りすがれば目線がスーッとそっちを向いていることくらい。あんたがウィーン少年合唱団のユーチューブばかり見ているのは、少年の声がこの世の中で一番美しい音だと思っているのも。あんたが好きな漫画の推しキャラも中学生以下の美少年キャラなのも分かってる。
でもね後悔しても諦めきれないこともあるんだよ。
「謙一は女の子には興味ないの?」
よしよし。由美ちゃん、よく聞いてくれた。どれだけショタコンであろうと、実際の恋愛では犯罪だからね。そこは身近にいる可愛い女の子で手を打つべきだ。私のようなね。
「俺はショタを愛でることで忙しい! 恋愛してる暇はないのだ!」
たまにぶん殴ってやろうかと思うが、謙一はこのキャラで愛されているのが現状だ。本当いい時代だよ。一線さえ越さなければ好きを力説しても受け容れてくれる人は多いからな。
由美ちゃんが哀れそうな視線を私に向けてくる。
「穂乃果ちゃん、こんなクラスメイト持って大変だね」
由美ちゃんは私が謙一に想いを寄せているのを知っている。そのため、そんな視線を醸しちゃうんだろうけど、そんな情景に一切気付かないのも謙一だ。
一緒にパンを齧っている草太は我関せずと謙一の垂れ流す性癖を聞き流している。
「いいか! 少年の造形こそ、完成されたものなんだ! 未成熟な手足に肌! 柔らかな髪に透き通る高い声! あれ以上の芸術があるか!?」
謙一の頭の中のお花畑もなかなか完成されているだろう。きっと年がら年中満開だ。
そう言えばこいつを好きになった原因って何だったっけな? 謙一と由美ちゃんと草太と私は幼稚園からの腐れ縁で高校でもこうやって一緒にいるけど、どの段階で謙一を好きになったんだろう?
ふと、気になるとそればかり気になる。パンを齧りながら明後日の方向を向いていると謙一の声が飛んでくる。
「穂乃果! ちゃんと聞いてる!?」
「聞いてる聞いてる」
聞き流してるってほうが正しいが、なんでこんな奴を好きになったんだっけ?
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