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 日本政府が「国民皆兵制」導入を発表した日から、ちょうど1年後。  この時期は、日本に「国民皆兵制」が導入されて日本人が男女を問わず強制的に軍人・軍属とされる20XY年新年度まで、あと1カ月を切る時期でもあった。  最早、この国のインフラは、「国民皆兵制」に猛烈に反対する管理職から末端労働者に至るまでのサボタージュにより、崩壊寸前に陥っていた。しかし、それを見越していた政府は、現役自衛官・予備自衛官・退職自衛官を総動員して、電気・水道・ガス・医療、そして運輸や交通・流通等の最低限度のインフラを、どうにかして維持させていた。  彼ら彼女ら自衛官たちは、永らく日本では「日陰者」の立場であった。ところが、ようやく「戦車や戦闘機・軍艦等を操縦して外敵を殺傷する訓練」以外の任務が増加したために、自衛官のほとんどは長時間、且つハードな仕事ばかりにもかかわらず、政府から与えられた任務(国民の生活インフラの維持)をストレスもなくこなしていった。そして皮肉にも、現役・予備・退職のいずれかを問わず、自衛隊経験者の誰もが一般国民の猛烈な反対とは裏腹に、「国民皆兵制」を内心では大歓迎していたのである。
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