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愛と命と最後のキス
初恋は、角砂糖より甘い味がする。何処の誰だっただろう、そんなロマンチックなことを言っていたのは。
「ん……っ」
チェリーはそっと舌を突き出し、彼のそれと絡めた。噛みつくように唇を貪り、唾液を交換するように甘い味を堪能する。
頭から爪先まで、全部が心臓になってしまったかのように熱くてたまらなくなる。目の前が真っ白になって何も考えられなくなってしまうのは、チェリーという存在が相手に吸い上げられているせいなのか、それとも。
「ぷはっ……」
息が苦しくなってきたところで、唇が離れた。頬が火照り、肩で息をしている私に対して、目の前の彼はぺろりと唇を舐めて余裕の表情である。
「最初の時よりキス、上手くなったじゃねえの」
けらけらと笑う彼は、長い黒髪に青い瞳、黒い翼を持っている。まさに、チェリーが絵本で見た悪魔そのものの存在だ。
そう、悪魔と分かっているはずの存在を、チェリーは毎晩夜、部屋に招きよせているのである。この、どこまでも濃厚で甘ったるいキスをするために。
「もうすぐ一カ月になるのよ。私だって、上手になるわ」
私は息を整えながら、どうにか強がるように言った。まだお腹の底から胸の奥まで、ドキドキが収まらないのを誤魔化すように。
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