6人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
始まる変化
金居蓮が腕時計を見る。
針は終業時間を指している。
スマートフォンを取り出しメッセージを確認する。
……連絡は無い。
「先輩! お疲れ様です!」
仕事が終わった後だというのに、仕事中よりも元気な声の主は後輩だ。新入社員の時から蓮に懐いていて、事ある毎に「金居先輩! 金居先輩!」と後ろをついて回っていた。
最初は煩わしくも思ったが、慕うだけではなく仕事を見て学ぶ力も凄まじく、メキメキと実力をつけている後輩を見るのは楽しくもあり嬉しくもあった。
なので、予定がなければ食事に連れて行ったりすることも多かった。
しかし、今日は違った。
「悪い、今日は予定があるから。――また今度な」
蓮に今夜の予定は無い。
だというのに何故断ったのか。それは――。
柴村智穂と連絡がつかない。
ここ数日、蓮からメッセージを送っても既読状態にはなるものの返事は無く、また智穂から連絡をしてくることも無かった。
彼氏ができた、とか?
でもそんな様子は無かったし、出会いだって無いはずだ。
だとしたら。
――智穂の身に何かあったんじゃないか?
蓮の心配は膨らんでいき、半ば無意識のうちに、足は智穂のマンションへと向かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!