一発逆転の一言

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 また別の日にはこんなこともあった。  ゴールデンレトリバーの子犬らしき犬を連れた男性がいた。  すれ違う際に、萌愛は素通りしようとしたが、ゴールデンレトリバーは伏せの姿勢で萌愛に視線を向け、尻尾を振って待っている。  これは犬の「君を待っているよ」の合図のようにも見えるが違う。  犬が他の犬を伏せの状態で待つのは、臨戦態勢。つまり攻撃準備をしているということになる。  伏せをして待つ犬には近づかないに越したことはない。  ところが、いざすれ違うと言う時に、ゴールデンレトリバーの方から寄って来た。  聞けば1歳のゴールデンレトリバーだという。 「何キロですか?」と聞かれたので 「23キロです」と答える。 「え?同じくらいですね。大きいなぁ」  いや待て、同じくらいと今自分でも言ったじゃないか。  大きくないだろ。と思っていると、相手の飼い主は萌愛を見て 「怖いなぁ、怖いねぇ」とゴールデンレトリバーに話しかけている。  こら、待て。  失礼にも程があるだろ。 何なら、喧嘩売る気満々で伏せていたのはゴールデンの方ではないか。 それに1歳で萌愛と同じくらいの体重なら、ゴールデンはもっと大きくなるだろう。でかいのは、萌愛ではなくお前の犬だ!  結局、男性は「怖いねぇ、怖いねぇ」を連呼しながら去って行った。
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