初恋

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放課後、まだ空はどんよりと曇っていた。やはり気分も重たくなってしまう。 サッカー部の練習が今日は休みだと分かっていたので、もう帰るのみだ。一人廊下をゆっくり歩く。平和だ、平和だ、平和だ、、、 学校から最寄り駅まで約15分、少し遠い。私は、今日、朝、この道を彼と一緒に歩いたんだなあ、、 駅に着くと、階段を降りてホームに向かう。降りた瞬間、すぐ気づいた。私の家と反対本面のホーム。一際輝いて私の瞳に映る、彼の姿。 そして、その隣には、綺麗な女の、姿が、、 私は立ち止まってじっと、二人の後ろ姿を見つめる。 見たくない。見たくない、こんなもの。それでも、じっと見つめる。 動悸が止まらない。息も荒くなっているのが分かる。 止められない、止められないこの気持ち。今日は本当に止められないかもしれない。 私は一歩、彼らに近づく。 きっと今朝知ってしまったからだ。彼の隣にいる幸せを。もう、止めることなんてできない。 更に一歩、彼らに近づく。 本当はずっと辛かった。いじめられてた頃の何倍も、何十倍も何百倍も辛かった。 更に一歩、彼らに近づく。 私のだけの彼になってほしかった。それぐらい、好きになってしまったていた。他の何を犠牲にしても隣にいたい。それぐらい、好きになってしまっていた。 更に一歩、彼らに近づく。 だからこそ、いつの間にかこんな思いが芽生えていた。そしてそれは、もう止められないくらい、大きくなってしまっていた。 更に一歩、彼らに近づく。もう、彼らの背中は目の前に来ている。 あなたがいなければ、最初からあなたがいなければ、私はこんな思いをせずに済んでいたんだ。こんな辛い思いはしなかったんだ。 『まもなく、ニ番線を、特急電車が通過いたします。黄色い線の内側にお下がりください』 ホームにアナウンスが流れる。そしてその数秒後、電車の警笛が聞こえてくる。 止められない。 もう、止められない。 『勇気出して自分から行動すれば、案外簡単に状況は変わるかもしれねえな』 頭の中に、あの時私にかけてくれた彼の言葉が流れる。 (すぅーー) 一つ大きく息を吸う。そして私は、 彼の背中を強く押した。
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