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夏になると猫たちは暑さから物影に引っ込んでしまい、なかなか狙うチャンスは訪れなかったが。秋になると再び道路の日当たりの良い場所に出てきたので、狙う機会は増えていったのだった。
ただ、当初の目的である“自分達の遊び場を取り戻すため、猫たちを追い出す”というのはなかなか達成されなかった。彼等は想像以上にしぶとく、自分達の縄張りと思い込んでいるエリアを離れようとはしなかったためである。
「こうなったら仕方ない。ボスに一点集中するしかないな」
「ボス?」
「ああ。こいつだ」
矢田が、スマホで撮影した猫の写真を見せてくれた。恐らくどこかの家で餌でも貰っているのであろうその猫は、明らかに他の猫より一回り以上大きかったのである。黒と白のブチに、金色の眼をしている。やや人相の悪いその猫は、他の猫にやられたのか左耳が少し欠けていた。
どうやら、こいつがこの近隣の猫集団で一番強いやつらしい。このボスの子供らしい子猫も結構見かけている、と矢田は言っていた。
「こいつを狙って追い出せば、きっと他の猫にも影響がある。暫く他の奴は後回しにして、こいつをみんなで狙うぞ」
なるほど、一理ある。
僕は頷いて、矢田と二人の友達と一緒にこのボス猫探しに集中したのだった。
そして、分かったことがある。涼しくなってきた今の頃、こいつはどうやら昼間には道路の真ん中で堂々と座り込んで休んでいるらしいということが。僕達が帰るくらいの時間になるとパトロールを始めてしまってどこかに行ってしまうので、遭遇する確率が下がってしまうらしい。
となれば、僕達がやることは一つ。仮病を使って仲良く学校を早退すると、すぐさま住宅地まで飛んできたのである。もう、最初に感じていた罪悪感は殆ど残っていなかった。そして。
「いたぞ、あいつだ!」
僕達は、あいつを見つけることに成功するのである。狙われているとも知らず、暢気に道路の真ん中で船を漕いでいるボス猫を。
「あいつら、近づくとすぐ気づくからな。匂いとか、耳が敏感なんだろうな」
特にあのボスはそうだろう。索敵能力が低い猫が、皆のリーダーなんかやれるはずがないだろうから。まあ、厳密には猫に群れというものはないはずなのだが。
僕は矢田のアドバイスに頷くと、石を握って、そして。
――飼い猫はともかく、野良猫は敏感だ。ちょっと近づいただけですぐ逃げる。逃げられたら意味がない。ていうか、気づかれたら面白くない。
振り返るまでが、勝負。
――よし!
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