いし、いし、いし。

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 *** 「最近、この近隣にクマか何かが出没するようです」  数日後。  先生が、険しい顔でクラスのみんなに言った。 「子供ばかりが狙われて、もう四件目……。みなさん、しばらくは学校に来るのも行くのも、友達と一緒にするようにしてください。大人が今、一生懸命クマを捕まえようと頑張っていますから。このままでは、休校になってしまうかもしれないので」  先生の言葉に、僕はすぐ近くの席の矢田と顔を見合わせた。彼の顔は紙のように真っ白だった。きっと、僕も同じような顔色になっているだろう。  小学校中学年相当の子供ばかりが、鋭い爪で引き裂かれて死ぬ事件が続いている。  大人たちはクマだと思っているようだが、そもそもこの近くに山なんてない。しかも、傷からしてどうやら敵は何匹もいるらしい、とくれば明白だ。 ――きっとあいつらだ。  僕は、奥歯をガチガチと鳴らした。 ――あいつらが、復讐のために僕等を探してるんだ……!  あの住宅地に、僕等はもう近づいていない。でも、家はあのすぐ近くなのだ。  このままでは、いずれ。 ――だ、だ、誰か、助けて……!  石を投げて遊んでいたなんて、大人に言えるはずもない。そもそも、野良猫が復讐のために人を食い殺すだなんて、一体誰が信じてくれるだろう。  タイムマシンがあるなら時間を戻して、あのゲームを始める前の僕達を止めたい。動物に酷いことなんかするものではないと。  何もかもが、後の祭りだった。  あのボス猫の尾が二股に割れていた、と気づくことも含めて。
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