22人が本棚に入れています
本棚に追加
3年前から一緒に暮らし始めた拓人とは、付き合ってもう7年になる。
「それだけ長く一緒にいれば、マンネリにもなるよね」
と、この前友人の美咲に会った時に、そう言われたけれど…。
「莉央、晩飯どうする?」
「あー…うん、何か作るよ」
もうそんな時間か…。どうせ外食する気もないのだから「どうする?」なんて聞き方、しなければいいのに。
立ち上がると同時に、惰性で観ていたテレビの電源を落とそうと私はリモコンに手を伸ばした…が、すぐにそれを引っ込めた。
そして鼻で軽く息を吐き、そのままキッチンへと向かう。
今テレビを消したら、きっとこの空間は‟無”だ。
包丁とまな板のぶつかる音、お鍋が沸騰する音…。ただただそういった無機物達による人工的な呼吸が、悲しく響き渡るだけ…。
そこに生命の揺らぎは感じない。
最初のコメントを投稿しよう!