放ったらかした罰

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放ったらかした罰

ある時 物の整理をしていたら お気に入りだったブーツが出てきた お気に入りだったのに 放ったらかして 何年も 何年も 家の中にあった 捨てることもなく 放ったらかして 存在 それ自体忘れていた お気に入りだったブーツ よくよく見ると なんだかおかしいぞ 履き口に 唇がついてる  ピンク色が 艶めかしい 妖しくて 気持ち悪いぞ ピンク色から 声が漏れてきた ずっと放ったらかして 淋しかった 手にとって  さあ 早く 履いてみて 幻聴だろう 靴が喋るわけがない だけど… お気に入りは もう お気に入りじゃない 変態化したブーツ なんて だけど… 一度履いて 捨てよう  もう 放ったらかしにはしない さよならだから そっとブーツを手に取り 足を入れてみた そうしたら ピンクの唇が ぎゅぎゅっと 足首を締め付けてくる おい おい おい まってくれよ 痛いぞ 少し 緩んだかと思うと 唇からまた声が漏れてきた 放ったらかした罰 君の足は わたしのもの 君の足が わたしの芽生え 君を 喰って わたしが新たに 誕生するのだ もう 逃げることはできない 君は 両足とも履いたからね そうだった 片方は 唇がない 元のままだったはず 今 改めて見てみると 履き口に  唇がいつの間にかついていて こっちも グイグイと 締め付けてくる 夢なら覚めてくれ 締め付けが強すぎて ぼくは 気を失った 再び 目を覚ましたとき 僕の身体は 半分になっていた 足がないよ ブーツは 一つになって 肥大化している もがいても 逃げれない 逃げようとしても  もう 足がない やがて 僕の身体を全て 喰い尽くしてしまうのか… 数年後 肥大化したブーツが 芸術作品として ギャラリーに 展示されていた で、その作家は 誰? 誰なんだ?
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