1人が本棚に入れています
本棚に追加
放ったらかした罰
ある時
物の整理をしていたら
お気に入りだったブーツが出てきた
お気に入りだったのに
放ったらかして
何年も
何年も 家の中にあった
捨てることもなく
放ったらかして
存在 それ自体忘れていた
お気に入りだったブーツ
よくよく見ると なんだかおかしいぞ
履き口に
唇がついてる
ピンク色が 艶めかしい
妖しくて
気持ち悪いぞ
ピンク色から 声が漏れてきた
ずっと放ったらかして
淋しかった
手にとって
さあ 早く 履いてみて
幻聴だろう
靴が喋るわけがない
だけど…
お気に入りは
もう お気に入りじゃない
変態化したブーツ なんて
だけど…
一度履いて
捨てよう
もう 放ったらかしにはしない
さよならだから
そっとブーツを手に取り
足を入れてみた
そうしたら ピンクの唇が
ぎゅぎゅっと 足首を締め付けてくる
おい おい おい
まってくれよ 痛いぞ
少し 緩んだかと思うと
唇からまた声が漏れてきた
放ったらかした罰
君の足は わたしのもの
君の足が わたしの芽生え
君を 喰って
わたしが新たに 誕生するのだ
もう 逃げることはできない
君は 両足とも履いたからね
そうだった 片方は
唇がない 元のままだったはず
今 改めて見てみると
履き口に
唇がいつの間にかついていて
こっちも グイグイと
締め付けてくる
夢なら覚めてくれ
締め付けが強すぎて
ぼくは 気を失った
再び 目を覚ましたとき
僕の身体は 半分になっていた
足がないよ
ブーツは 一つになって
肥大化している
もがいても 逃げれない
逃げようとしても
もう 足がない
やがて 僕の身体を全て
喰い尽くしてしまうのか…
数年後
肥大化したブーツが
芸術作品として ギャラリーに
展示されていた
で、その作家は
誰?
誰なんだ?
最初のコメントを投稿しよう!