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「じゃあ、そろそろ──」
立ち上がりかけた私に、高瀬が真新しい面タオルを差し出してきた。
「今日も一樹の殺人胴が決まるように。コレ、やるよ!決めろよな!」
去ってゆく高瀬の後姿と面タオルを交互に見る。
市野田が使う白い面タオルとは違う、深い緑。
白い文字で『心技体』と、染められている。
「……わかったわよ!私の剣道、やらせていただきます」
高瀬はいったい、いくつ私に芽生えさせたら気が済むのだろう。
剣道への情熱を、そしてほのかな恋心まで。
個人戦、準決勝が始まる。
私は礼をして中央ヘ進む。
今から、光り輝く5分間にダイブする。
完
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