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天井に近い窓から、オレンジ色の光が溢れていた。
それは試合をする二人の剣士に、柔らかいスポットライトをあて、最高の舞台を演出していた。
竹刀がぶつかり合う音、床を踏み込む足音、気合いの掛け声以外、不思議と音はない。
パァァァン!
小気味良い打突音と「めぇぇええん!!」と伸びやかな声が調和する。
「綺麗……」
この瞬間、帰宅部を希望していた私の夢は跡形もなく消え、舞台の中央に勇ましく立つ自分が浮かんだ。
高校生活に部活なんていらない。
興味をそそられる部なんてないから、帰宅部でいい。
「一樹お願い!一緒に来てよ!見学だけでいいから〜」
一人であの道場へ入れないと泣きつかれ、渋々付き添いを承諾する。
柔道場と剣道場は体育館の奥にあり、しかも中が見えない構造になっている。
「なんで剣道……真由はテニス部にするって言ってなかったっけ?」
「テニス部は止めた。剣道部よ、剣道部!ハァァ……米谷先輩。カッコイイ……」
真由の下心ありありな入部理由に、私の方がため息だ。
高校に入学して二週間、少しづつ慣れてきたがまだまだまわりを見回す余裕はない。
どの部に入るか?
中学と同じ部に入るのか、新境地を見出すのか、お弁当の時間はもっぱらその話だ。
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