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4番目に座る私は、まだザワついている道場内で、愛美達の声を拾ってしまう。
──勝てる、勝てる。小手を狙っていけよ?
──うん。大丈夫!応援してて?
同じ赤チームになり、愛美と彼氏はひそひそ話をしている。
丸聞こえなんですけど。
スッと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
不思議と気持ちは落ち着いている。
ユラリと、私の中に不思議な感情が立ち昇ってくる。
負けたくない。
勝ちたい。
絶対に勝ちたい。
私は勝つ!
これほど強く、勝つことを意識したのはあっただろうか。
私は自分を信じている。
私の夏休みを全て出す。
だから勝つ。
ゆっくりと面タオルを頭に付ける。
面を被ると、余計な雑音が消えた。
立ち上がり、軽く跳躍してみる。
うん、身体は軽い。
3番目の後輩が負けて帰ってくる。
「すみません……ファイトです……」
「ん。任せて」
短い言葉を交わすと、礼をしてそんきょに入る。
「はじめっ!」
狙っていた訳ではない、身体が自然と動いた。
「めぇぇええんっ!」
一瞬白い旗が上がるも、なぜか一本にならなかった。
鍔迫り合いから愛美をふっ飛ばす。
「止め!」
中央に戻る私に、白チームから声が飛ぶ。
「ナイス!」
「攻めてるよ!」
愛美の赤チームから彼氏の応援が飛ぶ。
「気にするな!いつも通り!」
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