この5分間へダイブする

3/14
前へ
/14ページ
次へ
道場の壁に叩きつけられ、ふっ飛ばされても起き上がり打ち込んでいく。 ──地獄の掛かり稽古。 私が一番嫌いな稽古だ。 練習が終われば部室で憂さ晴らし。 「顧問さ、いつにもましてドSじゃん!」 「ちょ、見てよ!アザになってる……あの変態ドS野郎ーー!」 そのドS練習が効いたのか、市内大会でベスト8まで進んでしまう。 そして、私達一年生のデビューでもある大会だった。 私も真由も補欠で、レギュラーメンバーのアシストくらいしか出番がない。 先鋒、次鋒、中堅、副将、大将。 先鋒に一年生で一番強い多香子(たかこ)が、次鋒に幼なじみの愛美(まなみ)が選ばれていた。 「多香子は良いよ、文句なしに強いもん。でも、愛美はさ〜気が強いだけじゃんか……」 真由がブツブツと呟いている。 この前愛美と帰った時、レギュラー入りをさんざん自慢された。 悔しくない訳がない。 私だって大会には出たい。 「どうしたら、強くなれるんだろ……」 打突のスピードは愛美には負けていない。 やはり、小手が上達しないのがいけないのか。 「一樹のスピードから繰り出される胴は、凄く良いと思う。もっと磨いていこう!」 先輩に誉められるのはいつも胴だ。 だけど、リスクが高い。 胴を放つ前に、面を打たれてしまう。 練習中ぼんやり考えていたら、面に竹刀が飛んできた。 「ボヤボヤするな!一樹、掛かり稽古だ!」 理不尽だな、先輩。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加