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道場の壁に叩きつけられ、ふっ飛ばされても起き上がり打ち込んでいく。
──地獄の掛かり稽古。
私が一番嫌いな稽古だ。
練習が終われば部室で憂さ晴らし。
「顧問さ、いつにもましてドSじゃん!」
「ちょ、見てよ!アザになってる……あの変態ドS野郎ーー!」
そのドS練習が効いたのか、市内大会でベスト8まで進んでしまう。
そして、私達一年生のデビューでもある大会だった。
私も真由も補欠で、レギュラーメンバーのアシストくらいしか出番がない。
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将。
先鋒に一年生で一番強い多香子が、次鋒に幼なじみの愛美が選ばれていた。
「多香子は良いよ、文句なしに強いもん。でも、愛美はさ〜気が強いだけじゃんか……」
真由がブツブツと呟いている。
この前愛美と帰った時、レギュラー入りをさんざん自慢された。
悔しくない訳がない。
私だって大会には出たい。
「どうしたら、強くなれるんだろ……」
打突のスピードは愛美には負けていない。
やはり、小手が上達しないのがいけないのか。
「一樹のスピードから繰り出される胴は、凄く良いと思う。もっと磨いていこう!」
先輩に誉められるのはいつも胴だ。
だけど、リスクが高い。
胴を放つ前に、面を打たれてしまう。
練習中ぼんやり考えていたら、面に竹刀が飛んできた。
「ボヤボヤするな!一樹、掛かり稽古だ!」
理不尽だな、先輩。
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