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剣道部に入部して一年。 私もとうとう先輩になる。 入部してきたのは7人で、女子は3人だけだった。 「少し剣道をやってました」 そう言った一年生の(さき)は、身長は低いが強かった。 スピードを活かした小手は、なかなか防げない。 彼女は入部3ヶ月で、先鋒というレギュラーを獲得した。 咲とは部内の紅白試合で初めて竹刀を交えた。 速い、そして打突が重い。 一本目は、早々に小手を取られた。 ──簡単に負けるわけにはいかない。 小手が来るのがわかっているならば。 私は集中力をさらに高め、咲が小手を打つのを誘う。 右へ左へすり足で揺さぶり、剣先を少し下げる。 ──来たっ!! 半歩下がり、小手を抜く。 咲の竹刀が空をきり、態勢が崩れた。 「めぇぇええんっ!」 小手を抜いている分タイミングが遅れ、浅く面を叩く。 一本にはならない。 「小手抜き面か!浅いな!」 興奮気味の顧問が叫ぶ。 良かったのはそれだけで、お手本のような綺麗な小手を咲にキメられ、無様に負けた。 キリリと奥歯が鳴る。 悔しくて、目の前が霞んだ。 「惜しかった」 次に戦う多香子が、軽く私の胴にグータッチした。 私もタッチを返す。 「……ん。ごめん……」 先輩としてのプライドなのか。 それとも、弱い自分が情けないのか。 色々な感情が私の頭を押さえつけてきた。
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